明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ33作目『侍戦隊シンケンジャー』(2009)11・12話感想

 

 

第十一幕「三巴大騒動」


脚本:小林靖子/演出:諸田敏


<あらすじ>
志葉家には「封印の文字」と呼ばれる文字が代々受け継がれており、それこそがドウコクを唯一封印できる手段である。しかし、圧倒的に強力なモヂカラが必要であり、先祖たちは使いこなせなかった。そのことを知った家臣たちは殿を守ろうと息巻くが、丈瑠は「その必要はない」と冷たく切り捨てる。そしてその情報を知ったアヤカシが殿との一騎打ちを申し込むが…。


<感想>
さあ来ました、第1クールの総決算にして、同時に終盤に関わってくる大きな布石がこの段階から貼られています。
思えば、この時からすでに丈瑠と家臣たちの間にはすでにズレがあるというか、完全には埋められない深い溝があったことがわかります。
ドウコクを封印できるという封印の文字は圧倒的に強力なモヂカラが必要とのことなので、やはり血筋が関係してくるようです。
また、封印の文字という手段を打ち出しておくことで、ドウコクへの対策がすでに示されているとともに、なぜ殿を家臣たちが守るべきなのかも具体化されました。


普通の戦隊ならここで一足跳びに「じゃあこれから俺たちは丈瑠を守るぜ!」「おう、お前たち!」となるのですが、丈瑠はそれをバッサリと切り捨てます
これには終盤で明らかとなるある事情が隠されているからなのですが、それだけではなくここで改めて「殿と家臣」という関係性を初期化するのです。
そう、ここがミソであり、普通の戦隊なら「仲間」として横並びにするところなのですが、本作はあくまで丈瑠を絶対的に君主として立てなければなりません
普通に仲間っぽくなってしまったら他の戦隊との違いがなくなってしまいますし、実際過去には主従関係が設定されたものの、うまくいかなかった作品がありました。


そう、「忍者戦隊カクレンジャー」「忍風戦隊ハリケンジャー」という同じ「和風ファンタジー戦隊」であり、それぞれカクレンジャーには鶴姫、ハリケンジャーには御前様という主君がいました。
しかし、この2作が主従関係を描けていたかと言われたらそんなことがなく、カクレンジャーの場合実質のリーダーはサスケであり、鶴姫と4人はあくまでも横並びの「仲間」だったのです。
そしてハリケンジャーにおいても御前様を主君として立てていたのはシュリケンジャーだけで、あとはハリケンジャーもゴウライジャーも御前様を立てていたわけではありません。
つまりこの2作はあくまで「和風ファンタジー」をもとにした普通の戦隊シリーズであって、本格的な時代劇をスーパー戦隊シリーズとして描きたいというわけじゃないのです。


これは本日から並行して感想を書いた「仮面の忍者赤影」を見ているからこそ思うのですが、小林女史が本作で擬似的に再現したいのはこのような時代がかった重くて渋い作風なのでしょう。
それを実現するためには、どれだけ物語が進んでキャラが成長して関係性に多少なりの変化があろうと、あくまで丈瑠と流ノ介たちは「殿と家臣」として一線を引かねばならないのです。
前回までである程度キャラの成長を一通り描いて関係性が出来上がったので、シンケンジャーがそろそろまとまって来そうというところで絶妙に重たいボールを放り込んで来ました。
それが後半〜終盤で描かれる三つ巴の殺陣であり、丈瑠を潰したいアヤカシ、丈瑠と斬り合いがしたい十臓、そしてそんな2人を捌きつつ志葉家当主として矢面に立つ丈瑠と利害が奇妙に重なっています。


また、十臓ははぐれ外道という「第三勢力」であり、一応は外道衆所属のようだが、利害の上で邪魔になるようであればアヤカシだろうと容赦無く敵対するという絶妙な立ち位置です。
忠義心が暴走した流ノ介とことはが真っ先に倒されてしまい、完璧に庇護の対象、すなわち「お荷物」となってしまっている茉子と千明…もうこの関係性がよくできていました。
特に千明なんてせっかくモヂカラが成長してやっとこさ丈瑠たちとともに戦えるレベルになって来たところで、またもや「丈瑠以外は役立たず」という第二幕のトラウマが再来したのです。
そしてとうとう、今回はそんな丈瑠ですらも負けてしまい、十臓は一方的に丈瑠に因縁をつけるタチの悪いストーカーとして因縁をつけられ、シンケンジャーは詰み寸前となりました。


まあ十臓が去る理由は「今はまだ丈瑠と斬り合いしたい気分じゃないから」でわかるのですが、アヤカシ側がここで「水切れ」となることで退散する理由として有効に機能しています。
さすがは小林女史、そう簡単に殿と家臣たちがヒーローになるという展開には持っていかず、そのためにここで関係性を第二幕あたりの段階まで揺り戻すとはね。
だんだんとこなれて来て、このまま仲間として一緒にやっていくという甘い展開なんて用意するわけがない、「ギンガマン」の頃からそうですが小林女史の中に「順風満帆」「平々凡々」というワードはありません
また、殿にとっても家臣たちにとっても高いハードルを突きつけて壁を示すことで、「勝って兜の緒を締めよ」といったところへ持っていっているのだと思います。


巨大戦も無理に挟まず、大胆に尺を使って余すところなく3人の斬り合いを見せる大胆な構成で、ドラマの密度がこれ以上ないほどに上がったのです。
また、封印の文字や十臓との因縁といった大事な伏線をこの段階から仕込んでおき、大枠を動かすことで一気に物語のステージが一段高くなりました。
その上で今度は「丈瑠1人でついに守りきれなくなった」という状態へ持ち込み、改めてシンケンジャー5人に揺さぶりをかけているのです。
丈瑠がいつも守ってくれるわけじゃない、丈瑠にだって守りきれない時はある…その状態でもなお家臣としてともに戦い続けられるのか?と。


第一幕から示して来た「殿と家臣」「忠義」「覚悟」「4人の家臣たちの存在意義」を問いつつ、4人が戦力としてある程度足並み揃って来たところで突き落とす構成が見事です。
もう一段階高く跳ねるには、その前に強烈なショックを与えなければならない…果たして丈瑠、流ノ介、茉子、ことは、千明…5人はどのようにしてシンケンジャーになるのでしょうか?
次回への期待も込めて、非常によくできた決戦編であり、評価はもちろんS(傑作)です。


第十二幕「史上初超侍合体」


脚本:小林靖子/演出:諸田敏


<あらすじ>
全滅は免れたものの清々しいまでの敗北を喫してしまったシンケンジャー。自分を庇って負傷した流ノ介とことはに責任を感じた丈瑠は無言で家出してしまう。彦馬爺は丈瑠が必ず戻ってくると信じ、残された家臣たちは改めて侍であること、家臣であること、シンケンジャーであることの意味を考えていた。迷った丈瑠は幼稚園児に道を聞く丈瑠、しかしそこでまたもやアヤカシとナナシ連中が襲いかかってきて…。


<感想>
さあ来ました、第1クールのクライマックスにして、侍戦隊シンケンジャーが改めて「戦隊」として成立する姿が描かれた名編が。
ドラマ的に大きなポイントは2つあって、まずはこれまで距離感を見失っていた部分があった家臣たちが一度「自分が丈瑠の立場だったら?」と考え直したところ。
そしてその4人がそれぞれの覚悟をもって殿に思いをぶつけ、丈瑠もまた自分の思いを4人にぶつけることで彼らなりの形で「殿と家臣」の関係性を構築したことです。
特に最初の方はこれまでの家臣たちには欠けていた視点ですが、逆にいえばようやく丈瑠が背負っているものの重さを4人も実感できたということでしょう。


歴代戦隊でもかなりハードな展開の「シンケンジャー」ですが、まず大事なのはこれまでの4人の家臣たちに求められていたのは「侍としての覚悟と決意を固めること」でした。
まだこの段階では4人の家臣たちの背景設定は詳細に描かれていないのですが、それはこの段階で描くべきものではなく、あくまで「真の家臣になるまでの過程」が優先されたからです。
流ノ介も茉子も千明もことはもそれぞれにスタンスや温度差はあれど、内面描写のほとんどが丈瑠に向けられたものであり、個人的事情など二の次になっています。
なぜこのような構成になっているかというと、まずは丈瑠と戦えるようにするためには、実戦の厳しさを前もって知ってもらう必要があったからです。


だから、第二幕で丈瑠が単なるいい加減な奴ではなく、圧倒的な強さをもって必死に戦っている強い志葉家当主であることをことはを中心に理解してもらいました。
そしてそこからは千明の成長、流ノ介の心の迷いと茉子の観察眼、そしてことはの健気さといった形で展開され、なんとなく5人の関係性が出来上がってきます。
しかしそれですらまだ本当の主従関係といえるものではなく、ここで横並びの「仲間」になってしまったらチームとしての結束力もなあなあになってしまうのです。
そこで前回もう一度第二幕のトラウマを再来させる形で4人に改めて丈瑠が抱えている「志葉家十八代目当主」という立場の重さが表面ではなく芯の部分で受けとめられたのでしょう。


よかったのは千明が「ペコペコされるのは気持ちいいだろうな」と言った後に「あのね!ペコペコされるってことはその人の全部預かるってことだよ!」と茉子が激怒したことです。
茉子ってこれまで流ノ介に甲斐甲斐しくした時以外で感情を露わにすることなく、基本的に中立の立場で後ろから見守るお姐さんという立場だったじゃないですか。
そんな彼女がここでようやく自分の想像力が及んでいなかったことに気づき、丈瑠の心情を察して悶々とし、それを千明が思わぬ失言で藪蛇突いた形です。
千明も別に怒らせようと思って言ったんじゃなく、沈みすぎている場をなんとか和ませようと彼なりに気を遣い、そのあとに改めて丈瑠の背負ったものを理解します。
ぶっちゃけ「それダメンズウォーカーですよね?」と思っていた茉子のやや屈折した優しさ、洞察力がようやく最良の形で発揮されました。


それを受けて彦馬爺も考え直し、改めて外道衆が出現した時に4人に初めて心情を明かしました。

 


「それから、これだけは言っておこう。殿は最後までお前達を集める事に反対しておられた。戦いに巻き込むまいと1人で戦っておられた」


そう、第一幕でやっていたあのやり取りがここで生きてきて、家臣たちはようやく丈瑠が単に強く厳しいだけではなく、その裏に優しさを抱えた人なのだと話すのです。
もちろんやろうと思えば彦馬爺も第二幕あたりで話してもよかったでしょうが、ここまでそれをしなかったのはまだ信頼関係ができていなかったからでしょう。
それに4人の家臣たちがまだ覚悟もできておらず実力も及んでいない段階で話しても、かえって逆効果になってチームが崩壊すると思ったからです。
だからこそ、たとえ「殿を贔屓しすぎ」「殿とその他」という批判が集まることになっても、まずは丈瑠の圧倒的な強さと厳しさを強調して描く必要がありました。
シンケンジャーを支えているのはあくまでも丈瑠の圧倒的な強さがあってこそであり、その上に初めて信頼や絆といったものができるのです。


そして丈瑠もまた1人で背負いこむのではなく、家臣たちに歩み寄ることを考えるようになるのですが、ここでの4人のセリフがよく考えられています。

 


「殿!うるさく思うでしょうが、私はこの様に育ちましたし、この様にしか戦えません!この先もずっと!」
「正直、戦うなら仲間でいいって思ってたけど、殿だから背負えることもあるんだよね、きっと…だから決める。丈瑠に命預けるよ!」
「お前が殿様背負ってくっつーなら、家臣になってやってもいい。ただし、俺がお前を超えるまでな」
「うち……あの………殿様!死んだらあかん!うちイヤです!それだけです!」


流ノ介は第七幕で自分なりの「忠義」とは何かをきちんと出した上で、自分が暴走していることも理解した上で開き直っています。
千明も第三幕で丈瑠を超えることを思い描いていましたが、それを改めて丈瑠に対して斜に構えつつ口にしているのです。
ことははもうとにかく自分の素直な気持ちを殿に届け…そして最後にやってきた茉子、これがまた絶妙なセリフになっています。
これまで様子見でなんとなくの距離感だった茉子が初めて感情を剥き出しにして「丈瑠に命を預ける!」と口にするのです。
また、「殿だから背負えること」とあえて丈瑠が背負っている内容を具体的に言わずボカすことで、逆に色気のあるセリフとなっています。


そして4人は丈瑠がちゃんと認めてくれるまで生身で戦っており、ここで丈瑠もまた改めて真の当主としての覚悟を口にするのです。


「流ノ介、茉子、千明、ことは……お前達の命、改めて預かった!」
「もとより!」
「俺の命、お前達に預ける!」
「任せろ」
「はい!」
「書道フォン!」
「「「「「一筆奏上!」」」」」
「シンケンレッド! 志葉丈瑠」
「同じくブルー! 池波流ノ介」
「同じくピンク! 白石茉子」
「同じくグリーン! 谷千明」
「同じくイエロー! 花織ことは」
天下御免の侍戦隊!」
「「「「「シンケンジャー、参る!」」」」」


ここの名乗りは終盤の生身名乗りと合わせて大好きなシーンの1つで、4人が「真の家臣」になる覚悟を示し、丈瑠もまた「真の当主」になる覚悟を示す。
これまで一方的な関係性だった丈瑠と家臣たちがきちんと自分たちの言葉でシンケンジャーになるこの瞬間に1クールで積み上げてきたものが集約されます。
ギンガマン」の「炎の兄弟」、「タイムレンジャー」の「新たなる絆」、そして「トッキュウジャー」の「決意」と小林女史の戦隊は必ず「真の戦隊」になるシーンがあるのです。
特に本作では「殿と家臣」という、歴代でも類を見ない難しいテーマに挑んでいますから、序盤から丁寧に関係性を描く必要がありました。


ここでの重要なポイントは5人が「横並びの関係で仲間になる」のではなく「殿と家臣としての絆を強める」という形で結束力を育んでいることです。
それは茉子の「戦うなら仲間でいいと思ってたけど」でも言われてるように、あくまでシンケンジャーは「侍」であって単なる「仲間」ではありません。
その後の主題歌に乗せての息の合った連携は関係性の変化として象徴的で、「侍とは裏切らない一度誓った仲間のこと」も最高のハマり方です。
「仲間」という言い方をしていても、他の戦隊のそれとは数段意味合いが違うことを強調しているからこそのものとなります。
ここから4人が二段構えの攻撃を防ぎ、最後に殿が大筒モードで決めるという、最高のアクションとしてこれ以上ないまでにカッコ良かったです。


さらにそこからロボアクションも盛り上がり、流ノ介が勢い任せでありつつ、密かに開発していた「テンクウシンケンオー」を成功させるのは見事。
ここは第二幕で空回りしておでん合体にしてしまったことと対比になっており、殿が「初めてお前に感心したぞ」と口にしていることからも成長が伺えます。
勢いに乗ったシンケンジャーに結束力の象徴としてテンクウシンケンオーを持ってきてフィニッシュとしたことでボルテージが最高に高まったのです。
思えば、第一幕で名乗りからのアクション→巨大ロボ戦の流れがイマイチだったのは敢えて狙っていたことだったのですね。


こうして、侍戦隊シンケンジャーがひとまず真の侍戦隊として出来上がる姿を描き、第一幕からここまで綺麗に繋がっています。
現在同時進行で書いている「ジェットマン」と比べると、やはり20年近くの歴史の蓄積と尺の余裕がある分こちらの方がいいですね。
評価は文句なしのS(傑作)、ここまで積み上げてきたものすべてうまく集約させた名編で、一番好きなエピソード。

 

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