明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ33作目『侍戦隊シンケンジャー』(2009)5・6話感想

 

 

第五幕「兜折神」感想


脚本:小林靖子/演出:竹本昇


<あらすじ>
稽古をずっと行っていた侍たちだったが、久々の休暇で遊園地に遊びに行くこととなった。しかし丈瑠は4人と遊ぶのではなく、橙色の秘伝ディスク・兜折神を使いこなす訓練に励む。無茶する丈瑠を支える爺だったが、今度のアヤカシは侍たちの斬撃を無効化する能力の持ち主。修行が完全に終わっていない中、丈瑠は辛い体を押して何とか秘伝ディスクの起動を成功させるのだった。


<感想>
遂に5話目にしてようやく来ました、丈瑠&彦馬爺のメイン回…ここまできてやっと丈瑠の裏にある思いが描かれるという、スーパー戦隊においてはかなり変則的な構成です。
普通ならレッドが主人公ですから、もっとわかりやすく最初の段階で見せても良さそうですが、丈瑠はこの辺りのハードルがかなり厳しく設定されています。
前回までの話では、とにかく「丈瑠=不愛想で厳しい無口な鉄仮面」として描かれ、若干の歩み寄りは見せつつも基本的に家臣たちと積極的に絡もうとしません。
とにかく「何を考えているかわからないけど、侍としては超一流」というその圧倒的な侍としての強さと厳しさのみを前面に押し出した完璧超人として描かれました。


今回のエピソードではその丈瑠の内面に初めて突っ込んだエピソードだといえ、完璧超人で天才タイプだと思われていた丈瑠こそが実は一番努力の人だったのです。
まあ俗に言う「努力の天才」というやつなのですが、単に偉そうにふんぞり返って実力を誇示しているだけではないところを今回しっかり視聴者に見せてきたといえます。
しかもその理由が「自分が矢面に立つことで家臣たちを死なせないようにするため」であり、もう1つは後半に出てくるある事情が深く関わってくるためです。
一応第一幕で「会ったこともない奴らを戦いに巻き込んでいいのか!」と言っていて、実は丈瑠は家臣たちのことが心配でたまらず、命を落としたらと不安なのです。


しかし、そんな不安を吐露してしまえば、ただでさえ未熟で距離感も団結力もバラバラな4人との関係性がもろく崩れ去ってしまうかもしれません。
丈瑠がそのように柔らかい部分、弱い部分を見せることができるのは後見人であると同時にメンターでもある日下部彦馬爺さんの前だけなのです。
ここまで敢えて触れませんでしたが、この日下部彦馬役の伊吹吾郎氏は「水戸黄門」で有名な大ベテランであり、シンケンジャーの世界観にシリアスさと重厚感を与えています
その彦馬爺が時に殿を厳しくいさめつつも、優しく温かく受け止めてくれる父親がわりの存在として描かれているのはここでうまく「彦馬爺に好感を持てるようにする」演出として成功です。
今回はそんな彦馬爺の名言が飛び出しました。

 


「彼らの支えになるのは殿の強さのみ。その強さに微塵の揺らぎもないからこそ命を預けて戦える、それが分かっているからこそ、殿は1人で…背負わねばなりませぬ、志葉家十八代当主を!」


これは綺麗事でも何でもない彦馬爺の名言にして、ある意味ではシンケンジャーの「長所」と「短所」を見事に言い当てた本質であるといえるのではないでしょうか。
そう、全てを捨てて挑む外道衆との厳しい戦いの中で、シンケンジャーの絶対的な強さの中心にあるのはシンケンレッド・志葉丈瑠の圧倒的な強さにあるといえます。
ある者はその強さに敬服し、ある者はその強さに劣等感を覚え、そしてある者はその強さを懐疑的に見て…いろんな視点がありますが、「丈瑠が強い」という事実は変わりません。
普通の戦隊だったら、ここで4人がそんな努力を必死に行う丈瑠の姿を見てそれに絆されるという形になるんでしょうし、実際同人や二次創作ではそういう話も多いです。


しかし、本家本元の小林女史はそんなに甘くはない、努力する姿という「過程」ではなくあくまで殿が実戦で見せる強さという「結果」しか見ていません。
また、丈瑠には志葉家当主だからという驕りのようなものがある訳でもなく、むしろ一瞬でもそれに満足してしまったら簡単にシンケンジャーは瓦解してしまいます。
まあ正直私の好みに合うかといわれたら微妙なんですけどね…ここまで意図的に「レッドとその他」という格差を示す必要があるのか?と最初に見た時は思いました。
通常の戦隊ならここで「殿がいなくても俺たちは頑張れる」となるところですが、本作はあくまでも「丈瑠が中心にいないとチームが機能しない」のです。


この一極集中はある意味戦隊のタブーに挑戦しているともいえ、「シンケンジャー」以前にもレッドと他の4人で扱いに格差のある戦隊はありました。
しかし、それが単なる設定上のことだけではなく、物語のドラマのテーマとしてがっちり据えられた戦隊は後にも先にも本作だけではないでしょうか。
現在の段階だとぶっちゃけ「侍戦士シンケンレッド」になってしまっており、今回初披露した大筒モードもレッド1人で使い4人が傅くというシュールな演出です。
そして、4人の前では完璧超人に見えている(あるいは自分で見せている)丈瑠が爺の胸元で倒れるという演出も丈瑠が内面を晒け出せる数少ない1人であるということでしょう。


ただし、物語のテーマとしては面白かったし、丈瑠と彦馬爺の関係性もしっかり掘り下げられたのはよかったのですが、バトルそのものはあまり盛り上がりませんでした
まず今回出てきたアヤカシの能力がいかにも烈火大斬刀・大筒モードの引き立て役ありきで作られたという御都合主義を感じますし、上にも書きましたが、殿が1人でとどめを打ちます。
作品の性質上仕方ないとはいえ、現段階ではシンケンジャーってレッド=主役家臣たち=引き立て役という感じに描かれているので、どうしてもアクションシーンはワンパターンというか。
あと巨大戦で頭にかぶって上から振り下ろす巨大戦という演出もあまりにかっこ悪くなってしまい、どうにもアクションとしては現段階だと「殿TUEEE」でしかありません。


この辺りはまだ現在同時進行で書いている「ジェットマン」の方がきっちり5人で団結して倒している感じはあるので、まあアクションシーンはいかにも玩具販促のためというのが透けて見えます。
これは本作で9年ぶりにメインライターに復帰となった小林女史がブランクが長かったこともあって、00年代戦隊の過剰な玩具販促ありきの作劇に慣れていないのかもしれませんね。
どうにも全盛期だった頃と比べて玩具販促の意味づけを物語のなかで行うことができていないというか…評価はB(良作)、ドラマはよかったんですけどアクションが月並みで雑です。


第六幕「悪口王」感想


脚本:小林靖子/演出:竹本昇


<あらすじ>
今日も剣の訓練に余念がない侍たち。ことはと千明が剣術を行うが、真っ直ぐかつ強いことはの剣術に千明は勝てずに負傷してしまう。しかし、そのことはは武術と剣以外はさっぱりで、怪我の手当てすらもまともにできない。そんな中、その人の最も傷つく悪口を言って物理的ダメージに変換するズボシアヤカシが出現する。侍たちもまた悪口で倒されていくが、ことはだけが無傷なままであった…。


<感想>
前回のシリアスぶりから打って変わって、今回はちょっと爽やか青春テイスト…と思いきや、実はさりげない爆弾を放り込んできました
ええ、終盤に向けての伏線を貼っているのはもちろんですが、何と言っても今回のテーマは同じ劣等生の千明とことはの絡み…もうね、これは見ていて胸が痛みます。
なんというか、つくづくこの2人って日本人独特の自己肯定感の低さを体現した存在だなあと思うのですが、改めてコンビとして描いたことでそれが浮き彫りになりましたね。
訓練を真面目にしていなかったばかりに実力不足が未だ解消されない千明と、ずっとさえない幼少期を過ごしていじめられっ子体質が抜けないことは。


初見では「ここまで暗い話にする必要あるのか?」と思ったのですが、一方でこれが最も「日本人とはどういう人種か?」をよく描いている気がします。
ことはに関しては第二幕で笛と剣以外は不得手でそれ以外は何もできず、シンケンジャーになったのも病弱な姉の代理であることが語られてそれっきりです。
千明もまた第三幕でその劣等生ぶりが描かれて以来でしたが、そんな2人がぶつかり合うとものの見事にマイナスとマイナスで打ち消しあってプラスになったという。
この2人、同じ劣等生同士でもその「劣等生」であることに対してどのように受け止め消化しているのかが全く違っていました。


まずことはは「素直」「健気」「純真」という性格ですが、それは決して天性のものではなく、いじめられっ子として過ごしていた自分を謙遜して卑下しているだけでした。
私はことはの天然な可愛らしさの中にどこか晴れない影を感じていたのですが、その影の正体が「劣等生だった自分」であることをどこかで認めて自分を変えるのを諦めていたからです。
そして千明は男の子で反発心が強いから、そんな風にいじめられたら「何が何でも強くなってやる!」と思うものだし、実際丈瑠を心の中でライバル認定して超えるつもりでいます。
こんなことを言うのもなんですが、ことはってぶっちゃけMっ気が強いですよね、悪い意味じゃなくて相手の言葉に一々反論しないというか…千明はやっぱりSっ気が強いですし。


だからそんな千明からしたら、自分よりも剣の実力が上のくせに「大したことない」という態度を取ることはにイラつくのは至極真っ当なことだといえます。
ことは「謙虚」と「謙遜」を履き違えているといえ、千明は千明で悪ぶってるけど不良にはなりきれないというお互いの欠陥がぶつかったことで見えたのです。
そのあとはお互いに誤ってスッキリ和解するのですが、これだけ見るといかにも傷の舐め合いっぽく見えても、そうはならない気のいい同級生みたいな感覚がいい味出してます。
きっと同じ学校のクラスメートだったらこの2人は意外と気の合う仲間になれたんじゃないかなあと思います、千明ってコミュ力あるから友達作るの上手そうですし。


特に千明がことはに対して言ったことは八つ当たりだったにしてもことはの短所を見事に言い当てているといえ、その健気さの裏に潜んだことはの痛々しさを本能的に見抜いていたのかもしれません。
逆にことはは自分のことで背一杯だからそんな複雑な感情の機微を千明が察していることも理解できず、だから鈍感といえば鈍感ですが、鈍さもまたある意味では強さです。
小林女史の系譜でいうと、千明はギンガイエロー・ヒカルの発展型ですが、ことははギンガレッド・リョウマとギンガピンク・サヤを融合させて極度に不器用にした存在だといえます。
姉の代わりに戦うまっすぐな芯の強さはリョウマと似てますし、殿様に対してやや恋心にも似た憧れを持っている点なんかはサヤのヒュウガに対する憧れを侍としての忠義心にしたものでしょう。


だからこそ、改めてズボシアヤカシに対してまっすぐに勝てたともいえ、しかも「姉の補欠」と言われたことにやや傷つくというところもまたリアルでいい反応でした。
ちなみに丈瑠の「大嘘つき」は終盤までにとっておきますが、流ノ介の「マザコン」「ファザコン」と茉子への「一生独身」は本当に図星すぎて笑ってしまいます。
いやまあ確かにあのダメンズウォーカーなところを治さないと、茉子は一生いい男と結婚できないと思うので、そのお眼鏡に叶う相手となると…やっぱり殿とかになるのかなあ?
私はあんまり戦隊内の恋愛は好きじゃないのですが(「ジェットマン」は別)、茉子と見た目も中身も釣り合いそうな相手って相当ハードルが高い気がします。
まあ中の人はもう今幸せな結婚生活を送っていらっしゃるので、そんなしょうもないことはどうでもいいのですけど。


さて、最後に丈瑠と茉子がこんな意味深なやり取りを行なっています。

 


「やめとけ。誰にでも、触れられたくないことだってあるだろ」
「ふ~ん、嘘つきも?」
「―そういうことだ」
「…まあ、そうだよね。殿様もそれぐらいはね」


私の記憶では丈瑠と茉子が一対一で絡んだのは何気にここが初めてで、クールな天才同士の肚の読み合いという独特の緊張感が凝縮されています。
茉子は丈瑠が何かを隠していることを実は前回の時点で見抜いているのですが、この段階ではそんな茉子ですらも「大嘘つき」の真意を正確には読みきれていません
そして丈瑠も丈瑠で無理に否定するのではなく「そういうこと」と肯定したように見せて煙に巻くことで、深い追求をされるのを絶妙に避けているのです。
ここで下手にムキになって否定しようものならかえって怪しまれてしまい、その大嘘が露呈してしまう可能性があるので、バレるわけにはいきません。


表向きは千明とことはのやや暗めな青春物語という「いい話」っぽくまとめつつ、ラストで意味深な丈瑠と茉子の大人の会話を入れることで緊張感を持たせているのです。
また、ことはもかろうじて堪えていただけで、戦闘終了と同時に意識を手放す辺りも非常に良くできており、話そのものは無難でも味付けや工夫で面白く見せています。
評価はA(名作)、年下2人組の横の絡みを強化しつつ、さりげなく大筋の部分でも伏線を仕込んでおくというテクニカルさが良くできていました。

 

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