明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ33作目『侍戦隊シンケンジャー』(2009)3・4話感想

 

 

第三幕「腕退治腕比」感想


脚本:小林靖子/演出:諸田敏


<あらすじ>
稽古に励むシンケンジャー一同だったが、千明だけは相変わらず寝坊も稽古に対する態度もひどく、剣もモヂカラも他のみんなに数段後れを取っていた。しかも殿に対する態度もひどく、戦力外通告まで受けることになる。イラついた千明は課題すらサボってかつての学友とゲーセンで遊んでいたが、その友人を外道衆の攻撃に巻き込んでしまい…。


<感想>
前回を経ての第三幕ですが、やはりメンバー一の劣等生であるシンケングリーン・谷千明に早速焦点を当ててのストーリー展開。
丈瑠との険悪な関係から自暴自棄になり、最終的にまたもや学友と遊び巻き込んでしまう…そこから「シンケンジャーとは何か?」をしっかりと描いています。
特に丈瑠からの「侍辞めろ」「友達と会ったせいだ」という言葉は何気なく見ていたものの、今思い返すと物凄く痛烈に響く言葉なのです。
本作の世界観やストーリー展開って逆「ギンガマンになっているというか、かなり意図的な裏返しの構造として描いているなと思いました。


世俗との関わりを絶っている戦闘種族という設定はギンガマンシンケンジャーも一緒なのですが、チームとしての成り立ちや外界との関わりはまるで違うのですよね。
ギンガマンは外の世界の知識を仕入れていながらも、結界を張って世俗との関わりを持たないようにギンガの森という特殊な世界の民族として生きていきました。
それがバルバンとの戦いで外の世界に出るようになり、青山親子をはじめ戦いを通して世界観が広がっていく、つまり「内→外」という広がり方をしています。
シンケンジャーはその逆で、志葉家の人間は世間一般との関わりを隔絶していて、逆に外界の住人である残りのシンケンジャー4人が世俗との関わりを捨てるのです。
つまり「外→内」という極めて閉鎖的な世界観で物語を展開しており、「シンケンジャーとして戦うためには過去の友達との関わりを捨てろ」は新鮮でした。


思えば第二幕でも茉子が自分の夢を放り出してきてるといってましたし、流ノ介も歌舞伎役者としての役割を放棄してシンケンジャーとして来ているのです。
殿が最初にかけた言葉が単なる外道衆との戦いの過酷さを知らせるためだけではなく、過去一切の人間関係を強制的に断捨離することも意味していたということでしょう。
まあ「ガオレンジャー」もそういう路線なんですけど、こんな風に「世間一般との関わり」に関して、一番現代っ子な千明と学友の関係を通して描いています。
これに関しては、変に現代的な要素や世俗的な価値観を交えると「カクレンジャー」「ハリケンジャー」みたいにチープなB級テイストの時代劇パロディみたくなるからというのもありますが。


また、これはビジネスというか大人の人間関係にもいえる話で、大人になって自分が成長してステージが上がると自ずと付き合う人間関係って変わるんですよ。
今までうまく行っていた学友との関係が急にうまくいかなくなって、千明はたとえ腕が数段劣っていたとしてもシンケンジャーとして戦う他はありません。
千明はこの段階で古い人間関係を断捨離してシンケンジャーとして新しい段階のステージに進まなければならないことを意味するのです。
その後のアヤカシを倒すための作戦が千明と殿で違っているところも細かい書き分けがなされていて、安易な「みんなでGO」にはなりません
そんな千明も改めて丈瑠の凄さを認め、2話の流ノ介とは違った形で自分なりの覚悟と決意を口にします。

 


「丈瑠!いや、殿…これからも一緒に戦わせてくれ!」
「…誰も辞めさせるなんて言ってない」


その後千明は丈瑠を追い抜くようにしてダッシュするのですが、千明のキャラクターを見てるとどことなくギンガイエロー・ヒカルやボウケンブラック・伊能真墨を彷彿させます。
まあ両者の性格をミックスしてさらに現代っ子に崩した感じなのでしょうけど、一度やる気に火が点いたら根は真っ直ぐなのでとても努力家だと思うんですよ。
ただ、何せまだ青春真っ只中のスレた高校生なので、どうしてもストレートに丈瑠への思いを口にするといったところができないでいるのでしょう。
ましてや丈瑠にウザいくらい執着している流ノ介やことはみたいなのを見ているがゆえに、あんまりにも侍であることにストレートすぎてもそれはそれで困るものです。
外道衆が改めて途中撤退する理由が「水不足になったから」というのは若干御都合主義な気がしなくもないですが、まあ納得はできるのでよしとしましょう。


で、話はこれで終わりではなく、殿のコミュニケーション能力というか接し方にも今回の問題はあって、丈瑠は結局シンケンジャー以外の戦隊だったら上手くいかないんだろうなと思いました。
第一幕で「忠義や家臣なんて時代錯誤」と言い、家臣たちにも「覚悟で決めろ」と言いつつ、その実結局は家臣たちに対して殿様然とした面でしか対応できない矛盾が示されています。
これにはある事情が関わってくるからなんですが、一見「丈瑠の対応が正しく、千明の未熟さが間違っている」ようでいて、実はこれが逆だったりもするのです。
誰に対してもフラットに接することができる千明は人懐っこくてコミュニケーション力がありますが、シンケンジャーというヒーローとしてはイマイチ。
逆に完璧超人で、戦いにおいてはパーフェクトなはずの丈瑠が実はコミュニケーション能力や人間関係に問題があって、人間性がかなり薄いのです。


本作における「ヒーロー性」と「人間性」は反比例の関係にあり、その辺りもまた人間性とヒーロー性が不即不離で比例していたギンガマンとは真逆でしょうか。
決して単純にかっこよく活躍して終わりではなく、徐々に殿と家臣たちが距離を縮めていく過程を通して、本作なりのヒーロー像がどう構築されていくかが見ものです。
評価はA(名作)、千明という脇のキャラクターから「シンケンジャー」とはどんなヒーローなのか?」を構造的にも明らかにさせています。


第四幕「夜話情涙川」感想


脚本:小林靖子/演出:諸田敏


<あらすじ>
流ノ介が突然家臣たちに「悩みがあれば相談しろ」と構うようになる。周囲はそれを鬱陶しく思ってしまうが、実はホームシックから来る流ノ介の精神の限界だったのだ。茉子はそんな流ノ介をついつい抱きしめてしまうのだが、その茉子は茉子で料理が壊滅的に下手くそという致命的欠陥がある。そんな中、人に涙を流させるアヤカシが登場するのだが…。


<感想>
いよいよ来ました、前回までひたすらに忠義心が暴走しているだけの残念なイケメンでしかなかった池波流ノ介…まさか極度の寂しがり屋だったとは(笑)
そして茉子…あー、ダメだこりゃ…茉子姐さん、あなたそれ単なる「ダメンズウォーカー」ですよ…とりあえず茉子さんはその内悪い男を捕まえてしまわないか心配です。
あ、ちなみに中の人である高梨氏はとても素敵なサッカー選手と無事ゴールインしましたので、今この話を見返すと笑い話として微笑ましく見られるんですが。
スーパー戦隊シリーズのヒロインにはいわゆる「弱っている男を放っておけない」というダメンズウォーカーの系譜というものが実はあります。


それは愛情とも取れるのですが、本作以前にも「こいつダメンズウォーカーじゃないか?」と思えるような女性はゲスト含めてスーパー戦隊シリーズに何人かいるものです。
個人的には「ダイレンジャー」の亮のライバルである陣の恋人・アキなどがそのパターンで、「私が陣のそばにいてあげなきゃ」と思ってる節があります。
また古いところで見ていくと、「デンジマン」の桃井あきらとか「ライブマン」の岬めぐみとか、00年代だとそれこそ「ゴーオンジャー」の須塔美羽もそのケがありますね。
あれかなあ、女性の「包容力」「母性本能」というやつを間違った方向に使ってしまうと「ダメンズウォーカー」になってしまうものなのかなあと切なくなるのです。


ただ、流ノ介の場合はシンケンジャーとしての宿命に対して生真面目すぎるが故に精神の糸が切れそうだからそうなるのであって、いわゆる「悪い男」ではありません
だからラストで立ち直った瞬間に茉子からは「そういうのウザいから」とバッサリ切り捨てられてしまったのでしょうけど…うん、どんまい流ノ介、あなたは何も悪くないですよ。
まあただ茉子姐さんの気持ちも一方でわからなくはないんですよね…あんなに鬱陶しいフルテンションで毎回毎回絡まれたら溜まったものではないでしょうから。
主にその被害に遭っているのが殿である丈瑠と未熟者の千明なので、丈瑠も内心「こいつ鬱陶しい」「空気読めねえな」と思ってはいたと思います。


だから、今回改めてシンケンジャーに対して一番中立的で冷静沈着に物事を見られる茉子の視点から流ノ介のそういう過干渉なとこをズバッと切ってくれたのはありがたいです。
流ノ介はいってみれば「自分が実力あるのをいいことに正論を振りかざしてドヤ顔する嫌なやつ」な造形ですから、そうならないように三枚目の側面も愛嬌として入れていますしね。
そして茉子ですが、個人的には正直未だによくわからないキャラクターだったのですが、彼女はいわゆる「ダメな男」が絡むと一気に冷静さを失っちゃうタイプなのでしょう。
その真の理由は後半に語られるのですが、実は最もシンケンジャーの中で「人間性」が希薄なのも彼女だったりはするのですよね。


涙を流させるというのは若干安易ではありましたが、こういう同情話っぽくい構成にすることによって流ノ介と茉子のキャラクターに変化を入れているのが今回のミソです。
前回までの段階だと丈瑠と並んで年長者の立ち位置にいる2人がすごく頼り甲斐のあるお兄さんお姉さんな感じなんですが、今回の話で一気にポンコツぶりを露呈させています。
そう、シンケンジャーとしてかなり腕が立つ剣術を持っているのに、それ以外のことになると全くダメダメなところは流ノ介と茉子の2人に共通しているところです。
その点、一見ヒーローとして頼りなく見える年少者のことはと千明が逆に今回では一歩引いて冷静な対応をしていたあたり、人間的にはこの2人のがよっぽどまともに見えます。


まあ千明とことはに関しては後々メイン回があるのでそちらで改めて語るとして、とりあえず流ノ介と茉子の2人の関係を一気に掘り下げたのは今回の見所でしょう。
お互いにシンケンジャーのサブリーダー格と呼べる2人の「仲のいい同僚」みたいな、言って見ればユウリとアヤセのようなクールな関係はいいですね。
話そのものはやや普通気味ではあるものの、「こういうアプローチでキャラを掘り下げるのか」という機転が面白く、評価はA(名作)

 

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