明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ15作目『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)5・6話感想

 

第5話「俺に惚れろ」感想


脚本:井上敏樹/演出:東條昭平


<あらすじ>
撃墜されてしまった香は精神的ショックから脚がすくんで動けなくなってしまい、車椅子を余儀なくされる。竜に飛行訓練を行うように頼むも体はうまく動かず、無理を押しての訓練は失敗した。そんな香を竜はさらに追い詰め、凱が寄り添いついでに口説くことに。一方でバイラムもまた「ジェットマンが倒した者がトップに立てる」というゲームの覇権争いを繰り広げるようになる。


<感想>
5話目にして追い込むねえ、井上先生も東條監督も…もうこの一言に尽きる、お嬢様だからって決して甘やかさないこのシビアさよ。
前回に続き香の未熟さをメインテーマに描いているわけですが、今回のポイントは香に対する竜と凱の対応の違いであり、なるほどこの辺りからジェットマンは「恋愛関係の修羅場」と思われがちなのかなと。
竜はもう最初にリエを喪失していこう自分の精神を保つために必死に完璧超人を演じているので、香に寄り添いたいのを堪えつつ「お前が戦士な立てるはずだ!」と段々教祖じみたことを言い出します。
しかし、そんな竜を一蹴し香に寄り添うのですが、ここでのポイントは凱が単なる「いい男」で終わるのではなく、ここぞとばかりに香を口説きにかかるところにあるのです。

 


「あんた、まさか竜の奴を?惚れるんなら俺に惚れろ!お似合いだぜ、俺たちなら」


はい、歴代戦隊でこんなに下手くそな女の口説き方をしている男は未だかつて見たことがありません。サブタイトルを回収しているわけですが、ここで3話でも見せた「女を振り向かせるための拗らせ」を発動します。
さらにここで厄介なのは「奴のいいこぶりっこが気に食わねえ」という言葉であり、凱が香を口説きにかかるのは単なる吊り橋効果による気の迷いではなく、「竜へのライバル意識」がありました。
まあそんなちっぽけな個人的事情に振り回される香が不憫すぎますが、単なるありがちな三角関係ではなく竜は凱も香も単なる「戦闘要員」としか見ておらず、本命は別にいるのです。
しかも凱だって本気で香に惚れてるんじゃなく、単なる女好きの性格と竜へのライバル意識ががっちゃんこした結果なのですが、まあムードもへったくれもないので香からはビンタを食らいます。


そんなすったもんだを乗り越えていくわけですが、この地べたに這いつくばりながらも頑張る香は本当にすごくて、それこそ長浜ロマンではないですが音を上げる寸前まで追い詰めるのです。
ここは脚本の力というよりも演出の力なのですが、やはり「帰ってきたウルトラマン」から物凄く迫力のある画をたくさん撮ってきた東條監督のドSぶりが遺憾無く発揮されています。
で、凱も凱で一生懸命香に尽くしたにも関わらず香の意識は全く凱に向けられておらず、なぜだか竜の方に惹かれてしまっているという切ないものでした。
まあそれでもきちんとハンカチを綺麗にして返すだけマシではあるんですが、とにかく結城凱は割とマジで男として最低スレスレのところを低空飛行しています。


そして、もう1つの見所はその凱と香が強烈に意識している天堂竜であり、このまま何もなしかと思えば遂にマリアと至近距離で対峙することになりました。
そう、視聴者からも天堂竜が完璧超人に見え始めたところで、容赦なく横から流れ弾が飛んできて吹っ飛ばされてしまうという、とんでもなくねじくれた展開。
このシーンはわずかしか描かれていないのですが、4人には見えないところで竜の個人的感情が思わず露呈してしまうところが描かれています。
先の展開まで全部知った上で見るとこれも伏線となっているのですが、とにかく竜のキャラクター像を崩していくための仕掛けを用意周到に行っているのです。


そのマリアが所属する敵組織のバイラムも遂に目的が判明し、その目的とは「ジェットマンを倒した者がトップに立てる」というゲームでした。
これまで全貌が露わになっていなかったバイラムですが、実は本作ではいわゆる「首領」がいないので実質のアナーキズムという組織になっています。
ジェットマンがバラバラの混成チームなら、敵側のバイラムもまた団結力や協調性が皆無な無法者であり、この辺りからすでに崩壊の兆しは見えているのです。
これでバイラムの団結力が完璧だったらジェットマンは第一話の時点で詰んでいるでしょうね…それくらい歴代でも凶悪な集団(というか野党)として描かれています。


前回、そして今回と「香の弱さ」に言及するエピソードだったわけですが、大元を辿るとこれは原点の「ゴレンジャー」40話の本作風のリブートではないでしょうか。
「ゴレンジャー」40話ではチームの攻撃の要にして最大の急所でもあるモモレンジャー・ペギー松山が変身不能に陥ってチームが危機に陥る話がありました。
似たような話は「ゴーグルファイブ」の序盤でも描かれているのですが、本作の鹿鳴館香はそのような「弱い戦隊ヒロイン」の系譜を受け継いでいるといえます。
体も華奢で腕もか細く、精神面も肉体面も男性陣はおろか高校生のアコにすらも劣ってしまうという…正直やりすぎだとは思いますが、この辺りが本作らしいリアリズムでしょう。
そしてそれを単なる香個人のドラマで終わらせることなく、最終的にはイカロスハーケンという飛行形態への合体成功というカタルシスに繋げています。


同時にここまで丹念に香のキャラクターを竜や凱との関係性を含めて扱っているからこそ、後半の展開や結末にも説得力を持たせることができるといえます。
もっとも、ここはあくまで香にとって「スタートラインに立った」に過ぎず、真のヒロインとして立つにはまだまだですが、その原点を描いているのです。
そして竜と凱もまた「いい男」と思わせておいてその実情けない面を沢山描いており、何というか井上先生の描く男ってなぜかダメ人間率が高い(笑)
完璧超人に見えるやつでも「実はそうではない」というところに落とし込むところが、とてもらしいなと。
評価はS(傑作)、前回と合わせて「香が戦士になるまで」のスタートラインをしっかり描き、その中に伏線も数々仕込んでいるのです。


第6話「怒れロボ!」感想


脚本:井上敏樹/演出:東條昭平


<あらすじ>
イカロスハーケンへの合体に成功させた竜たちであったが、そこから更なる人型ロボット・ジェットイカロスへの合体訓練を行う。しかし、今度は香の代わりに凱がチームをかき乱してしまい、訓練は失敗に終わる。さらに凱はめんどくさくなって飛び出すと香が追いかけるが、そんな香の説得すら無視して凱はウェイトレスとのデートに洒落込んでしまう。そのデートのためにウェイトレスは自宅に戻るのだが…。


<感想>
いよいよジェットマン序盤の完結編というか、とりあえず「ジェットマンというチームが一通り出来るまで」の土台はここまでで完成を迎えました。
この時期の戦隊は1号ロボ登場が遅いのですが、これはおそらく競合の勇者ロボシリーズやSDガンダムなどとの兼ね合いもあるのかなと…エルドランシリーズも始まりましたしね。
で、その完結編に何を持って来たかというとやっぱり凱であり、とにかくこの男は事あるごとに拗らせてチームをかき乱す「ミスター要らんことしい」ですよ。
竜と香が妙に仲良くなってしまったのがつまらないものだから、飛行訓練で邪魔してやろうという醜い足の引っ張り合い…いい感じに器が小さいですねえ。


だけど香も香で凱の気持ちには気づいているはずなのに、そこで説得して連れ戻そうなんて余計なことしちゃうものだからウェイトレスをナンパしてしまい、しかもあっさり成功という。
実はここで香がやっていることは第3話の竜と全く同じなのですが、多分竜や香みたいなタイプって学校でいうところの学級委員をやりたいタイプなんでしょうね。
典型的な優等生気質というか、お互いに惹かれ合うのも育って来た環境の違いがあるといえど、根っこの部分で似た者同士だからではないかと思います。
ああそうか、もうこの時既にこの3人の運命に関しては示されていたのだなと…「光」の側に属している竜と香に対して「影」の側に属している凱という違い。


その凱はナンパに成功したはいいものの、そこにはなんとハウスジゲンが住んでおり、結局凱の目的であったデートはおじゃんになってしまいました。
まあ正直デートしようと思ったところにたまたま次元獣がいたというのは御都合主義ではありますが、ここで大事なのは凱が臨戦態勢に入っていることです。
普段はサボることを考えていても、それは根っからそうなのではなく「竜が気に食わない」という個人的事情があるだけで、戦いそのものが嫌いというわけではありません。
目の前に火の粉が降って来たらそれを振り払うくらいの等身大の正義感は持ち合わせていて、きちんと竜とも力を合わせていますので、この辺りのメリハリがいいところです。


第二話からそうでしたけど、凱が余計な個人的感情をこじらせなければジェットマンは大体うまくいく法則はあり、逆にいうとその2TOPがある種の弱点にもなってはいるのですが。
そこからのジェットイカロス初合体はロボアニメの演出を取り入れているのか、ミニチュアからスーツアクターに変わる瞬間の映像の見せ方は見事です。
ただ、これ実は初合体じゃなく最初に4人で合体しているので、ここは流石にやりすぎだったと思います、せめて最後の切り札として見せて欲しいところでした。
そしてもう1つ、実はラディゲが今回前線に出ていますが、ここでもう1つの変身形態である凶獣ラディガも登場していて、これもまた突発的ではない登場のさせ方です。
まあ「イカロス」という名前の通り、このロボットは初登場こそかっこいいもののとにかく腕がもげまくる弱いロボットでして、なんでこんな不名誉な神話の名前をつけたのかは謎なんですが。


ひとまず今回のエピソードまででジェットマンの基礎土台はできたのですが、驚いたのは4話〜6話まで雷太とアコが完全に蚊帳の外であるということです。
大筋の部分でドラマを担うのが竜、凱、香の3人で残り2人は賑やかしという感じでしょうが、まあ5人が5人バラバラでも話は成り立ちませんからね。
それからバイラムも今の所ラディゲとマリアのインパクトが強いのですが、この後はグレイとトランも徐々に存在感を発揮するようになります。
ハラハラドキドキの展開を仕込んだ濃密な序盤の立ち上げが終わり、ひとまずジェットマンの大枠は完成といったところでしょうか。
評価はA(名作)、歴代戦隊のくくりで見てもかなりレベルの高い設計です。

 

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