明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ15作目『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)3・4話感想

 

 

第3話「五つの力!」感想


脚本:井上敏樹/演出:新井清


<あらすじ>
5人揃ったジェットマンだが、肝心の凱が戻ってこない。小田切長官は雷太、アコ、香の3人と訓練を開始し、竜は婦警を口説きにかかっている竜を説得しにかかる。長官にしごかれている3人はタイヤを引っ張る訓練を開始するも途中で雷太1人に押し付けて逃げようとし、凱も凱でとにかく竜に追いかけられるのが気に食わず、説得を拒絶するなど前途多難。凱の行きつけのバーにまで駆けつけて必死に説得するもすげなくされる竜だったが、バイラムの次元獣ジャグチジゲンが残された3人を襲う。竜は凱を残して戦いに駆けつけるのだが…。


<感想>
メンバー自体は全員揃ったものの、足並みが全く揃わない第3話。構成としては竜&凱、そして残りの3人と小田切長官なのですが、何がすごいって凱のかっ飛ばし具合(笑)
婦警をデートに誘い、断られたら構ってもらいたいからとわざと信号無視し、追いかけて来た竜の説得すらも跳ね除けて一匹狼として生き続けようとしています。
初登場から危険な匂いはプンプンしてましたが、蓋を開けてみれば危険なんてレベルじゃない犯罪者予備軍であり、それを必死に説得しようとする竜もまた凄いです。
前作「ファイブマン」までだったらここまでくどく描かないところをしつこく描いていくことによって、5人がヒーローになるまでの過程を見えやすくしています。


そんな凱が改めてジェットマンとして戦うようになるまでを描いているのですが、ここでのポイントは凱が何か特別な理由や事情があってジェットマンとしての戦いを拒否しているわけじゃないこと。
凱はただ竜が嫌いかつ性格的に一匹狼だから戦うのが嫌なのであって、ここが「デンジマン」の桃井あきらや「バイオマン」の小泉ミカとは大きく異なっているところなのです。
桃井あきらは死んだテニスコーチのことが忘れられないという辛い過去があり、小泉ミカは写真撮影が好きだったからというきちんと打ち込むものがあって断ってますし、しかも世間一般に迷惑をかけていません。
しかし、凱ときたら単にめんどくさいから自由になりたくて逃げてるだけであり、しかも自分の快楽のために交通違反までわざとやって女の子の注意を自分に仕向けさせようするのです。
この「好きになってもらうためにわざと振り向かせようとする」のはその後とんでもない形のトラブルに発展する伏線になっているのですが、ここがその最初の伏線となっています。


そして、ジェットマンとして戦う決意をして戻ってくる理由もまた直接的に表現しないところがにくい演出であり、単なるライバル意識かプライドからか、視聴者にはどうとも取れるようにしているのです。
このことによって「正義感に目覚めたから戻った」という安易な流れにしておらず、「とりあえず協力はしてやるけど、まだ完全に信頼したわけじゃない」という距離感の置き方になっています。
まあそれも当然の反応で、いきなり「お前今日からジェットマンになって戦え!」なんて命懸けの戦いを強要されたら、ましてや竜のようなタイプからいわれたら嫌がるでしょうね。
今回初めて5人揃っての名乗りとなるわけですが、それはあくまで「ジェットマンとして戦うことを仕方なく了承した」のであって「ジェットマンとしての正義感に目覚めた」わけではありません。


また、凱だけが問題なのでしゃなく、田切長官に訓練でしごかれる素人の雷太たちも注目すべきところであり、仮に凱が来て5人揃ったところで竜以外が実戦で通用しないレベルなのは変わらないのです。
強いていえばブラックコンドル・凱だけは竜に次ぐ実力者ではありますが、本物のプロフェッショナルではなく戦士としての使命感や意識が低いため、組織としてかなり危ういところに立たされています。
本当に竜と小田切長官がいなかったら、ジェットマンなんてあっという間に崩壊してしまうことが示されており、そのことによって竜の行動が単なる復讐だけではないところのバランスも絶妙です。
だからこそ戦いが終わった後、凱は竜を無視してアコと香に挨拶するわけであり、これは凱なりの社交辞令であると同時に、竜に対するライバル意識の現れでもあります。


一方のバイラムもまた「おめでとう諸君。我らバイラム4幹部、心よりお祝い申し上げる」と物凄く慇懃無礼な挨拶をしながら、まだその組織としての全貌が明かされないのです。
このバイラム独特の不気味さは歴代で見てもかなりのものであり、いわゆる前作「ファイブマン」の銀帝軍ゾーンまでとは違い、「得体の知れない怖さ」もまた驚きの対象となります。
総合評価はA(名作)、前回までと比べると「ここ!」というハイライトはないものの、凱と3人がジェットマンの仲間入りをするプロセスを丁寧に描いた名編です。


第4話「戦う花嫁」感想


脚本:井上敏樹/演出:新井清


<あらすじ>
5人揃ったジェットマンは改めてジェットマシンの飛行訓練を行っていたが、たった1人香だけが上手く乗りこなすことができず、小田切長官に失格を言い渡された。戦士としての力量もパイロットの操縦技術もない香は凹んでいたが、そこで竜は甘ったれるなと一喝する。頭に来てしまった香は一時的な感情からジェットマンを抜けて実家に戻ると、婚約者の北大路総一郎と再会しプロポーズされた。結婚すべきか、それともジェットマンとして戦うべきか、香は人生の岐路に立たされるが…。


<感想>
凱に続き今度は香まで…たかがジェットマンとして一緒に戦うだけでこんなに揉め事が起こるのかと驚きますが、ここで大事なのは「入隊したから一足飛びにヒーローになるわけではない」ということです。
他の戦隊だったら「スーツ性能のおかげで訓練しなくても大丈夫」「ひとまず揃ったから今日からみんなでGO」となりがちですが、そうはならないのがジェットマンの甘くないところ。
たとえバードニックウェーブを浴びて身体能力が強化され、ジェットマンに変身出来るようになったところで実戦経験も訓練もない者たちがプロ級に戦えるわけがありません。
普通の企業だったら「適性なし」と見なされて本採用にならずにおしまいで万々歳でしょうが、バードニックウェーブを浴びた資格者が他にいない上、スカイフォースは全滅状態です。
しかも「地球の平和を守る」という物凄く重たい使命を抱えている以上、泣き言は言っていられないのです…偶然だろうがなんだろうが、一度選ばれたからには退路はありません


その上でもう1つの細かいポイントは「結婚」という選択肢…これが伏線であるのはもちろんのこと、女の幸せに簡単に逃げたがる香の意識の甘さも描いています。
個人の自由が認められていて結婚に大した価値がない今の時代ならともかく、バブル崩壊直後の1991年はまだ「結婚」が男にとっても女にとっても1つのステータスでした。
だから、戦いが嫌になったら結婚に逃げればいい…香はお嬢様ですから心のどこかでそう思っていたのかもしれず、そこに婚約者がやって来たという最悪のタイミングです。
更に婚約者は「僕たちは選ばれた人間」などという差別意識丸出しの発言までしてしまうため、この結婚が正しいことのようには描かれていません。


見所は香がブチ切れた挙句に婚約者との関係性を一瞬で損切りしてしまう次のセリフです。

 


「じゃかあしい!きったねえ手でさわるんじゃねえよこのスカタン!てめえは自分のことしか考えてねえんじゃねえかよ!でも竜たちは違う!みんな自分を捨て、戦士として戦ってるんだ!そして私も戦士なんだ!」


言葉遣いこそ汚いものの、改めて香がジェットマンの一員であることを自覚し、仲間入りするまでを描いています…もちろん問題はこれで片付いたわけではないのですが。
確かに香の精神的未熟さはここで一旦克服されたのかもしれませんが、それでもパイロットとしての技量その他で竜たちに後れを取っていることには変わりません。
そのあと5人揃って戦ってもなお香のパイロットとしての技量不足は克服されておらず、最終的には撃墜されて気絶してしまうというカットで締めくくられているのです。
まさに「一難去ってまた一難、ぶっちゃけありえない」のですが、ここで面白いのは香が実は最も早い段階で「心の成長」という壁とぶつかっていること。


この段階だと竜が完璧超人でその次に凱、そして雷太、アコと続いているように見えますが、実は人間性という面では竜が最も成長していません。
それは彼が完成された人間だからではなく「完璧超人である自分を演じている」に過ぎず、しかもそうさせている動機がたった1人の恋人との喪失です。
本人も無自覚でそこをやってしまっているがために、単純な成長物語の構造にはなっておらず、何重にもひねくれた構造となっています。
ここまでややこしい人間関係や屈折がある作品となると、それこそ「シンケンジャー」くらいなのですが、あれとはまたちょっと違うのですよね。


そんな香のキャラを掘り下げつつ、じわじわと竜が自分の精神を病んでいくプロセスが描かれており、しかしそれは大人だけが見えるところに隠されています。
この「一見ストレートに表現しているようでいて、実は本音の部分は間接的に表現している」のが「ジェットマン」の面倒くさくも面白いところです。
総合評価はS(傑作)ジェットマンが徐々にチームとしての基本ができていると思わせつつ、まだクリアすべき壁は多いことが示されています。
果たして彼らはどのようなチームとなっていくのでしょうか?

 

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