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スーパー戦隊シリーズ第32作目『炎神戦隊ゴーオンジャー』(2008)

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出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/4065095190

スーパー戦隊シリーズ第32作目『炎神戦隊ゴーオンジャー』は前作「ゲキレンジャー」の大失敗を経て、数字回復を目論んで作られた一作です。
まあとにかく見てもらえればわかりますが、本作はとにかく予算不足感がキャストからビジュアルからアクションから何から伺えます。
そのせいで全体的に漂うチープなB級感が半端ではなく、個人的にはここまで画面が貧相なのは「カクレンジャー」以来ではないでしょうか。
まあその意味で言えば、同じ車モチーフ+ギャグの「カーレンジャー」もB級テイストではあるのですが、あれはかなり意図的に狙ったB級テイストです。


本作はいわゆる炎神をはじめとした玩具売上をひたすら回復させるため、キャストはゴーオンレッドの古原靖久氏をはじめ華のない役者が揃っています。
強いて言えばゴーオンウイングスの徳山秀典氏と杉本有美氏、そしてガイアーク3大臣の紅一点であるケガレシア役の及川奈央氏は豪華キャストでしょう。
しかし、それでもやはり作風のせいなのかスーツデザインやロボデザインの安っぽさのせいか、全体的に「玩具販促のためにやってます」感が見え見えなんですよね。
もちろん子供向けですから商業的な部分も大事ではあるのですが、結局「ガオレンジャー」までの頃に逆戻りかよと当時はガッカリして見る気が失せました。


そのため、改めて見直したのは2018年のYouTube配信だったりするのですが、その時にはそんな気持ちはなくなっていたので、意外とフラットな目線で見れたのです。
確かにこういう取っ付きやすさもまた特撮作品には大事だなと…変に高年齢層受けを狙って滑ってしまうよりはまあこんな感じも悪くはないかなというところまでに来ています。
ただ、それでもやっぱり諸手挙げて「好き」とまでは言えないしそこまで「高評価」でもないので、本作の企画意図などを分析しながらその理由について見ていきましょう。

 

 


(1)企画意図は「ガオレンジャーの大ヒット再び」


まず本作の企画意図は冒頭でも書きましたが「ガオレンジャーの大ヒット再び」であり、プライドも何もかもを捨ててスポンサーである財団Bの意向に従いました。
メインライターに武上純希氏を8年ぶりに抜擢したり、サブライターに宮下隼一氏や荒川稔久氏を始め様々なライターを揃えたのもそういう企画意図があったのでしょう。
実際武上氏と宮下氏はキャラのドラマは下手くそでも玩具販促でしっかり結果を出していますし、ドラマ部分では會川先生や古怒田健志氏に任せています。
これはなぜかというと「ガオレンジャー」が玩具販促のためにストーリーやキャラクターをないがしろにし、さらに「奇跡の連発」という阿漕な方法に頼ってしまったからです。


ゴーオンジャー」がメインライターで企画意図が玩具売上の回復という時点で、子供はともかく我々大きなお友達は「ガオレンジャー」の悪夢がまた蘇ることを懸念したことでしょう。
日笠Pおよび武上純希氏もそのことは相当に反省したのか、本作は「ガオレンジャー」の二の舞を演じることにならないよう、サブライターを据えることにしました。
これに関しても「ゴーゴーファイブ」「ボウケンジャー」でドラマを書ける人をサブライターに置くことで作品世界が安定感を持つことになったという教訓があるからです。
そういった過去の事例を徹底的に洗い直し、分析した上で本作は「奇跡の乱発」「玩具販促のためにキャラとストーリーを犠牲にする」ことをまずは回避しています。


とはいえ目的はあくまでも「玩具販促」にありますから、そこをブレさせるわけにはいかず、だからこそ「炎神ソウル」という設定にしたのでしょう。
炎神たちの「喋る相棒」設定は爆竜から来ていますが、より親近感を持たせるためにヒューマンワールドでは普段小さいままの姿にしています。
しかし、走輔たちが炎神ソウルをセットすることで、炎神はウルトラマンのように3分間だけ巨大化して動くことができるのです。
この設定の元に後は追加武装であったり、追加玩具であったりを足し、さらに炎神とゴーオンジャーたちにそれぞれ特徴的な口癖や決め台詞を入れています。


こうすることによって「ガオレンジャー」の問題点であった変身前のキャラクターの薄さや爆竜たちのキャラの弱さに関してはある程度解消できるのです。
後はもう回を進めていくごとに役者たちがアドリブなどを入れて膨らませていくことで、金太郎飴方式であってもある程度キャラは立つことになります。
深く掘り下げないで進行する分、少なくとも子供たちにとってはストレスフリーで見られるために、置いてけぼりを食らうことはありません。
しかも「ボウケンジャー」の時とも違って中途半端に大人向けにはしていませんから、路線が明快でブレがないことは評価していいポイントです。


(2)敵も味方もバカばっか


そしてそんな玩具販促を通りやすくするために作り手が選んだことは「敵も味方もバカばっか」にすることであり、これは浦沢義雄先生が使った「カーレンジャー」と似た手法です。
しかし、「カーレンジャー」の場合はスーパー戦隊シリーズ不思議コメディの世界観に染めてパロディする目的で作られており、ヒーローのお約束を理解した上での鋭いブラックジョークとなっています。
一方で「ゴーオンジャー」は鋭いブラックジョークを用いてスーパー戦隊をパロディするのではなく、あくまでも玩具販促を見せるための最低限の物語としてバカっぽくするのです。
例えるなら「カーレンジャー」は落語やコントのような構成の妙や「巧い!」と唸るような笑いであるのに対して、本作は吉本興業の漫才のようなどストレートな笑いでしょう。


比較的クールというかシリアスっぽく描かれているゴーオンウイングスだって、あくまでも「正義バカ」であって、決して何か戦士たるにふさわしいバックボーンがあるわけではないのです。
そう、ゴーオンジャーとウイングスの7人は決してプロ中のプロというわけでもなく、ゴーオンジャーとウイングスの戦闘力の差もあくまでスーツ性能程度の差でしかありません。
よく本作を評する時にゴーオンジャーがアマチュアでウイングスがプロと評する意見を見かけますが、私に言わせればウイングスだって金持ちでちょっと訓練と経験がある程度で決して真のプロではないのです。
いわゆるゴレンジャー、サンバルカンチェンジマンジュウレンジャーオーレンジャーギンガマンデカレンジャーボウケンジャーのように職業戦士や宿命の戦士などではありません。


というか、本作に出てくる戦士たちが全員使命感の強いプロ中のプロみたいな連中だと途端に作風としてシリアスというか重くなってしまい、戦いの動機や人間ドラマを描かないといけないのです。
本作は別に深いドラマを目指したいわけじゃないのですし、そのような使命感の強さなどかえって邪魔なので、それらは全て除外して必要最低限の「正義バカ」で全てを通しています。
一見するとふざけているようですが、前作「ゲキレンジャー」のあの中途半端に大河ドラマを描こうとして大ゴケした後とあってはそのような大それたことはできなかったのでしょう。
そこで全員が葛藤することなく正義の味方をやる姿を成立させるためには、敵も味方もバカっぽく軽い連中として描いた方がいいという判断だったのです。


この方針は正直私の好みからは完全に外れているのですが、最初からそのように設定されていれば一応筋は通るので、まあ悪くはないかなとは思います。
とはいえ、魅力を感じるかと言われたらそれはまた別物であり、心底からこのヒーロー像とヴィランを好きになれるかと言われたら微妙なところです。
そしてそれは後述する要素とも繋がっていきます。


(3)普通すぎて物足りない


上記してきたような特徴を持つ本作ですが、一言でまとめるなら「普通すぎて物足りない」が私の率直な感想です。玩具販促通りに行い成功したのはいいですが、「だから何?」と思ってしまいます。
これがいわゆる子供向けの王道系の難しいところで、結局本作の人気って目先の数字を回復させるためだけに行っており、そんな中で10年後も20年後も残る作品が生まれるわけがありません。
言っては何ですが、ちょっと視聴者を甘く見過ぎていないかと…これはまあ「ガオレンジャー」にも感じたことなのですけど、あっちはそもそもストーリーとキャラクターが酷すぎてそれ以前の問題でしたからね。
その意味では、本作は子供向けとしてはまあアンパンマン」「ドラえもん」レベルのお話にはなっているので、あまり細かいことを言いすぎなければ良質の作品ではないでしょうか。


ただ、私のように「ジェットマン」以降の激動期のスーパー戦隊シリーズを知っている身としては、あまりにも中身が普通すぎて正直物足りないというか「もっと上を見せてくれ!」と思ってしまいます。
一応お約束やパワーアップ回などはありますし、「お!これは面白い」と思える回もあるので、全部が全部ではないのですが、ただそれらは結局お約束をお約束通りにこなしすぎているだけにしか見えません。
変わった展開があるわけでもなく、またキャラクターが特別に面白いわけでもドラマやストーリーが緻密なわけでもないので、どうしても食い足りないんですよね。
ガイアークとゴーオンジャーたちの戦いも確かにエスカレートはして行くのですが、それはあくまで演出上のことであって、ストーリーとしてボルテージが高まるわけでもありませんしね。


本作に関して言うと、結局のところは「スーパー戦隊のフォーマット」はしっかり守られているのですが、いわゆる「物語の面白さ」があるわけじゃないので、それが大きいのかもしれません。
現にそれは視聴率にも現れていて、玩具売上がめちゃくちゃ高かったのに視聴率が前年ほど大きく回復しなかった理由は物語の求心力やドラマの迫力がそんなになかったからでしょう。
だから本作は確かに「嫌いじゃない」のですが、かといって「好きでもない」という、結局「平々凡々な良さ・面白さ」の領域でとどまっているのかなあという感想です。
王道って言ってもニュースタンダードを作ったわけじゃなく、単に既存のレールに乗っかっただけであって、歴代戦隊の設定を深く吟味したというような文芸的な深みはありません。


(4)00年代戦隊シリーズの中身の無さを教えた作品


まあ総じてまとめるのであれば、この「ゴーオンジャー」という作品は「ガオレンジャー」以降の00年代の戦隊シリーズが中身のないシリーズであったことを示したのではないでしょうか。
これは「ガオレンジャー」の時点でそうだったのですが、お隣の平成ライダーシリーズが「中身のある面白さ」を担うようになったので、スーパー戦隊が「中身のない面白さ」を請け負うようになったのです。
戦隊レッドがなぜずっとバカレッド続きだったのかというと、これも結局は「熱血」と「わかりやすさ」を一本化してドラマが複雑化しないように深入りを避けていたと言えます。
それもそれで子供向け番組としては賢明な選択なのかもしれませんが、私に言わせればそれは「勇気ある選択」ではなく「思考停止」にしか思えないのですよね。


スーパー戦隊シリーズはいつからか「偉大なるマンネリ」と呼ばれるようになりましたが、それはおそらく作り手にとっても受け手にとってもスーパー戦隊シリーズが「あって当たり前」という認識だからでしょう。
私が原体験で過ごした90年代の頃を美化するつもりはありませんが、あの頃の戦隊シリーズは技術や方法論こそ足りない部分が多いながらも決して「あって当たり前」ではなく驚きや刺激の対象でした。
でもある時期、おそらくは「ガオレンジャー」以降の大ヒットに気を良くして楽な道に逃げることばかりを考え続けたスーパー戦隊シリーズは結局前作「ゲキレンジャー」で現実逃避を行ってきたことを露呈したのです。
そして、そのためにガス抜きを行って次へと繋いでいくために作品が作られる、本作は00年代末期の作品としてそのことをよく教えてくれた作品であったと思います。


まあかなりネガティブな言葉の雨あられみたいになっていますが、一応当初の目的は果たしていますし、とりあえずお金がなければ何もできないのはその通りなのでそれは否定しません。
ただ、結局作り手が思考停止状態でこの8年近くも物語を作り続けてきたことを白日のもとに晒してしまったのは何だかなあとついつい切なくなってしまうのです。
毎年毎年命を削って「今子供達に何を伝えるべきか?」を真剣に考えて悩み抜き、必死に頑張って「タイムレンジャー」まで紡いできた20世紀戦隊の頑張りは何だったのかと思います。
だから私はシリーズを続けてくれることそのものには賛成はしても、作品作りの姿勢において作り手がスポンサー側に癒着してズブズブの関係に陥ってしまうのが許せないのもあるのかもしれません。
しかし、そうした不満の声は作り手にも当然届いていて、その不満を解消するかのごとく作られたのが次作「シンケンジャー」ですから、むしろよく望みをつないでくれたと思います。


(5)「ゴーオンジャー」の好きな回TOP5


それでは最後にゴーオンジャーの好きな回TOP5を選出いたします。

 

  • 第5位…GP18「庶民ヒーロー」
  • 第4位…GP19「軍平ノホンネ」
  • 第3位…GP08「最高ノキセキ」
  • 第2位…GP23「暴走ヒラメキ」
  • 第1位…GP36「走輔...トワニ」


まず5位は走輔とゴーオンウイングス兄妹との絡みが描かれた回であり、走輔と美羽のさっぱりした男女の友情が決まったいい回でした。
次に4位は軍平がネタだけではなくそれなりに葛藤するも、その葛藤が吹き飛ぶ後半のバカっぷりにいろんな意味で笑わせられます。
3位は會川昇氏が書いた「ゴーオン」序盤の名作回であり、ゴーオンジャーと炎神たちが揃って名乗りを行うところは名シーンです。
2位はデタラメデスとの戦いにおいて、ゴーオンウイングスにはないゴーオンジャーの強さ、そして走輔と大翔の歩み寄りを描いている名作回でした。
そして堂々の1位は3クール目の終わりにして実質の最終回と思える決戦編であり、ヨゴシタインとの決戦としてよくできていました。


(6)まとめ


本作は前作「ゲキレンジャー」の反省から「ガオレンジャー」の時と同様の手段を取ったのですが、あちらよりはまあ綺麗にはまとまっています。
よほどのことでもない限り本作を「嫌い」という人はおらず、万人受けはしやすいのでしょうね、私の好みからは完全に外れていますけど
しかし、本作は一応の名目は果たしたので、あとはこれに「物語の面白さ」が加われば何とかシリーズとして持ち直すことができます。
それこそが満を持して登場することになる次作「シンケンジャー」であり、うまくバトンを繋いでくれました。
総合評価はB(良作)、かなり甘めの評価となりましたが、まあなんだかんだ悪くはないシリーズです。

 

 

炎神戦隊ゴーオンジャー

ストーリー

D

キャラクター

B

アクション

B

カニック

A

演出

D

音楽

A

総合評価

B

 

評価基準=S(傑作)A(名作)B(良作)C(佳作)D(凡作)E(不作)F(駄作)

 

 

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