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スーパー戦隊シリーズ第9作目『電撃戦隊チェンジマン』(1985)

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出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B098NPZ741

スーパー戦隊シリーズ第9作目『電撃戦隊チェンジマン』は前作「バイオマン」までを踏まえた80年代戦隊シリーズの集大成であり、私の中ではギンガマン」「ジェットマン」の次に大好きな戦隊です。
「ゴレンジャー」に次ぐ55話という話数もさることながら、史上最大の規模感とそれに見合うだけのドラマ性の高さ、個性豊かなキャラクターと傑作たる要素が全て揃っています。
そして何と言っても個人的に良かったのは「アースフォース」という神秘なる力の設定…これがチェンジマン側の力の源として大きな説得力を持ち、荒削りながらも後発の戦隊に大きな影響を残しているのです。
伊吹長官をはじめとするチェンジマン5人の個性豊かなキャラクター、更に歴代でも屈指の強さと存在感を誇る大星団ゴズマの大ボス・星王バズーとその配下にいる部下たちの設定もよくできています。


本作は「サンバルカン」以来の軍人戦隊という設定ですが、いわゆる上原正三氏の描く「お前今日から〇〇戦隊だから戦え」「イエッサー」な上意下達方式と違い、個々のメンバーの決断で立ち上がります。
選ばれたプロフェッショナルのエリート軍人でありながら、普段は軍人ぽくないというか、どこかフレンドリーで親しみやすいところがあるのがチェンジマンらしいと言えるところでしょう。
そんな「チェンジマン」ですが、改めて今日から向き合って分析して見たときの魅力は何なのでしょうか?

 

 


(1)歴代戦隊史上最大のスケール感


本作最大の特徴は何と言っても史上最大のスケール感であり、終盤に向けてどんどん世界観が拡張されていき、話の規模感が広がっていくというところに魅力があります。
もちろん単に宇宙規模の物語なら「デンジマン」「バイオマン」「ファイブマン」もそうですし、「カーレンジャー」「ギンガマン」「ゴーカイジャー」「キュウレンジャー」なども宇宙規模です。
しかし、本作が諸作品と違って頭一つ抜けているのはそのスケール感が単なる設定や映像だけに止まらず、きちんとキャラクターの個性やメカニック、アクションなどにも生かされていることです。
それを可能にしているのが本作で初めて登場した「アースフォース」という神秘の力であり、地球が危機に瀕したときに選ばれし者のみに貸し与える星の力という設定が功を奏しました。


この設定があるからこそチェンジマンはゴズマの強大な侵略者たちを相手に戦うことができるわけであり、またそれがチェンジマンだけではなくゴズマ側や伊吹長官の秘密にも関わっているのです。
もっともアースフォースという設定自体は今日の視点で見直すとやや練り込み不足な部分もあり、後発作品でより洗練された形の力が出てくるのですが、その大元を作ったのは大きいのではないかと。
そんな風に物語が非常に高い土台からスタートしているために、次々と宇宙の侵略者が現れてもまるで違和感がないし、また終盤に向けてどんどん強さがエスカレートしてもそれが魅力となるのです。
本作からいわゆる「強さのインフレ」が目立つようになっていくのですが、それに見合うだけの設定がしっかり凝らされ描写として奥行きのあるものになっているからこそ歴代史上最大の規模が魅力となります。


チェンジマンの5人もまた個性的で面白いのですが、個人的にはそんな5人をまとめ上げる恰幅のいい伊吹長官や中盤以降に物語のヒロインを担ってくれるナナちゃんなど、サブキャラクターもまた魅力的なのです。
特にナナちゃんはいわゆる「ゴーグルV」の桃園ミキをサブの位置に持ってきた感じで、最初は無力な少女だったのが最後はチェンジマンたちと力を合わせてゴズマに立ち向かうほどに強くなっていきます。
また、最初はややだらしない面が目立った疾風翔や大空勇馬も後半になるにつれて男らしくカッコよくなっていきますし、ダブルヒロインの麻衣とさやかも一癖も二癖もあるヒロインとしていい味を出していました。
こうした個性豊かなキャラクターたちが物語の中心にいるからこそ、作品世界の壮大さにも説得力が出て凄まじいドラマ性を獲得するに至ったのだと思います。


(2)地球を守る戦士から宇宙の星々を守る戦士へ


(1)とも若干被るのですが、後半〜終盤にかけてチェンジマンの5人の心境がどんどん変化していき、地球を守る戦士から宇宙の星々を守る戦士へと視野を広げていくのもまた魅力的です。
物語序盤の段階では、チェンジマン5人はゴズマの怪人や幹部連中を単なる「倒すべき敵」という認識しか持たず、「地球を守る」という狭い視野でのみ動いていました。
それ自体が悪いわけではないのですが、本作では話が進むにつれて、実は大星団ゴズマ自体が星王バズーの恐怖政治によって乗っ取った星々からスカウトした戦士たちです。
つまりシーマやブーバをはじめとするゴズマの幹部たちは「アンチチェンジマン」と言える、「チェンジマンがなり得たかもしれない暗黒面」を体現した存在でした。


彼らはその事実をナナちゃんとの交流やゲーター一家、ギョダーイとの交流を持つことによって知っていき、敵だったものを味方につけて戦うという前代未聞の展開を見せました。
敵だったものが味方になる展開は過去になかったわけではないのですが、いわゆる「改心して」というのではなく「戦いの中での派閥を超えた呉越同舟」という形は本作くらいでしょう。
とはいえ、どんな幹部も味方にできるわけではなく、せいぜい味方にできたのはシーマ、ゲーター一家、ギョダーイ位でブーバやアハメス、ギルークのように仲間にできないものもいます。
そしてその幹部連中はどこまで行こうが味方になることはなく、それぞれにふさわしい末路をたどることになり、それがまた見応えあるドラマになっているのです。


このように、最終的には敵味方の派閥を超えて共闘するようになっていく展開がとてもよくできていて、こうした外の力を身につけて勝っていく様が非常にロジカルに描かれています。
最初からこの路線が志向されていたわけではないのでしょうが、物語の中で自然にそのような形に変化していくことで他のシリーズにはない屈指のテンションが終盤に生まれました。


(3)予想外のドラマをもたらしてくれる終盤の展開


(2)でも触れましたが、チェンジマンという作品でドラマを作っているのはチェンジマン5人ではなくチェンジマン5人と関わる敵幹部や被害者であるナナちゃんたちです。
シーマ、ゲーター一家、ギョダーイ、ナナちゃんと作品の中で思わぬ形で成長や変化を遂げるキャラクターが面白く、当初からは考えられない魅力が開花していきます。
そしてここまで敢えて触れませんでしたが、本作で最も予想外のドラマを作ってくれたのが他ならぬ伊吹長官であり、彼の姿は当時かなりの衝撃だったのではないでしょうか。
何と彼は地球人ではなくヒース星人ユイ・イブキという宇宙人だったわけであり、後付けといえば後付けなのですが、序盤でゴズマやアースフォースのことを知っていたのも納得です。


ちなみにこの「実は地球人ではなく宇宙人だった」という手法はその後「ドラゴンボール」の孫悟空実は惑星ベジータサイヤ人カカロットだったという形で使われていたりします。
そんな宇宙人たちがいるからこそ、チェンジマンたちとが組み合わさって想像以上の化学反応を見せましたし、また残された宇宙海賊ブーバや女王アハメスなども見事な最期を見せました。
特にアハメス様の狂乱からの基地ごと道連れにする最期は本作最大の盛り上がりを見せ、力に飲まれた女幹部としてこれ以上はないだろうというところまでしっかり描ききっています。
そして星王バズーもとんでもない正体を隠しており、しかもその倒し方も予想斜め上を行くものになっているので、こうした敵の幹部連中が見せる最期は歴代屈指と言えるでしょう。
ただし、そういう風に敵側がドラマを作っていくために、やはりある欠点が残ってしまうことになります。


(4)どうしても空気化を免れないチェンジドラゴン以外のメンバー


本作の数少ない欠点として、どうしても終盤で空気化を免れないチェンジドラゴン以外のメンバーが痛いところです。
剣飛竜はナナちゃんとの絡みがありますし、ブーバとの一騎打ちやアイデアを閃くなど要所要所で見せ場がありますし、渚さやかもまだ後半でイカルス王子との話などメイン回は有りました。
一方で残りの翔、勇馬、麻衣の3人が話の都合とはいえ空気化してしまったのは惜しまれるところであり、アクションでも台詞でもいいから見せ場が欲しかったところです。
まあ4人に関しては前半で贅沢にメイン回をもらえていたのでその分で大きなポイントはあるのですが、最終的な思い入れはナナちゃんや敵の幹部連中などに行ってしまいますね。


わたしは基本的にヒーロー側にしか思い入れが発生しないのですが、本作はむしろ敵側やサブキャラクターがドラマを作っているので、思い入れはどうしても敵側になります。
このあたりはまあ敵側しか掘り下げるドラマを用意できなかった当時の戦隊の限界とも言えますし、だからこそ次作「フラッシュマン」以降の試行錯誤があるのですけどね。
もう少しドラゴン以外のキャラクターも掘り下げられると、より作品としても厚みが増していい感じの大傑作に仕上がったのではないでしょうか。


(5)「チェンジマン」の好きな回TOP5


それでは最後にチェンジマンの中から好きな回TOP5を選出いたします。


・第5位…24話「ギョダーイの家出」
・第4位…35話「地球よ!助けて!」
第3位…37話「消えたドラゴン!」
第2位…53話「炎のアハメス!」
第1位…52話「ブーバ地球に死す」


まず5位ですが、いわゆる巨大化要員のギョダーイについてきちんとキャラが掘り下げられたのは面白く、しかもこれが終盤の味方化の伏線にまでなっているので侮れません。
4位は勇馬メイン回ですが、実質のチームアップエピソードで、アースフォースに頼らず自分たちの力で乗り越える決意をしたチェンジマンたちの姿が見どころです。
3位はチェンジドラゴン・剣飛竜のメイン回として最高の出来栄えであり、「敵を騙すにはまず味方から」を含めてどんどん超人じみていく剣さんの原点となった回。
2位は最高視聴率を誇ったアハメス様の最期ですが、物語のテンションとしては間違いなくここがクライマックスでしたね。
そして堂々の1位はシーマの死と再生、そしてブーバとチェンジドラゴンの一騎打ちを描いた52話であり、話の密度で言えば「チェンジマン」の集大成にふさわしい傑作でした。


チェンジマン1話1話のアベレージがとても高いので選ぶのに苦労しましたが、わたしの中で特にこのエピソードと言われたらこの5本がランクインします。


(6)まとめ


改めて我が人生のバイブルの1つである「チェンジマン」について語ってきましたが、やっぱり好きなものを語ると次々と言葉が出てきますね。
正直この評価でもまだまだ足りないくらいで、是非とも機会があればまた詳しく一話一話じっくり感想を書いていきたいものです。
バイオマン」までの歴史の蓄積を踏まえて、当時のスーパー戦隊の技術の粋を全て集めて作り上げただけあって、破格のクオリティとなっています。
いわゆる「完璧超人型の軍人ヒーロー」は本作をもって1つの完成を迎え、次作「フラッシュマン」以後は違う方向を模索していくことになりますが、本作は曽田戦隊の「光」の集大成でしょう。
総合評価はもう文句なしのS(傑作)、「昭和戦隊最高傑作」の名は伊達ではありません。

 

 

電撃戦隊チェンジマン

ストーリー

S

キャラクター

A

アクション

S

カニック

A

演出

S

音楽

S

総合評価

S

 

評価基準=S(傑作)A(名作)B(良作)C(佳作)D(凡作)E(不作)F(駄作)

 

 

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