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スーパー戦隊シリーズ第8作目『超電子バイオマン』(1984)

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出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B098NRSL7G

スーパー戦隊シリーズ第8作目『超電子バイオマン』は前作「ダイナマン」の成功を受け、本格的に大河ドラマ路線へと舵を切ることになった第一歩の作品です。
冠名からもわかるように「超電子」=「電子(戦隊)を超える」と解釈すれば本作は「デンジマン」の設定を継承しつつよりそれを追い越すことが目標にありました。
実際本作は「デンジマン」から多くの要素を継承しており、具体的には以下の要素が挙げられます。


・頭にきらめく電磁メカ
・2つの星が力を合わせて戦う(デンジ星&地球人→バイオ星&地球人)
・選ばれしメンバーたちが全員先祖の子孫である
・物語序盤で女性戦士が宿命を拒否する(桃井あきら→小泉ミカ)


こういった要素を継承しつつ、しかし「デンジマン」とは異なる新基軸も打ち出しています。それが「敵側が元地球人である」「第三勢力のバイオハンターシルバ」「歴代初のダブルヒロイン」です。
本作に登場する敵の親玉・ドクターマンは元地球人で「人間が機械化すればいい」という考えのもとに新帝国ギアを創設しており、それに対抗するにはバイオ星の科学しかありません。
また、第三勢力のバイオハンター・シルバは前作終盤で出てきたダークナイト=メギド王子の中二病な感じが大ヒットし、それを継承してより本格的なギアとは別のバイオマンの敵にしたのでしょう。
終盤ではさらに主人公・郷史朗の父親が出てきて骨肉相食む人間ドラマが展開されるなど、より長浜ロマン三部作へのリスペクトが強くなっていきます。


そして何と言っても本作で特筆すべきは「歴代初のダブルヒロイン」、すなわち桃園ミキのような華奢で愛らしい可愛い系のヒロインと立花レイのような強くてかっこいい男勝りのヒロインが共存しました。
このダブルヒロイン制はシングルヒロインよりもはるかに差別化が図りやすくなり、今現在でも多くの戦隊シリーズで手を替え品を替え使われていて、戦隊シリーズの柔軟性を感じさせます。
そんな本作ですが、それでは前作「ダイナマン」や元ネタの「デンジマン」を超えるほどの傑作だったのかと言われると残念ながらそうではなく、未消化に終わった要素がたくさんあるのです。
とは言え、いい部分も沢山あるので、今回はその中から良い点と悪い点を2つずつ抽出して、それを総合評価とさせていただきます。それでは以下ご覧ください。

 

 


(1)壮大で美しい音楽


まず何と言っても本作最大の美点は壮大で美しい矢野立美氏の音楽であり、彼女の壮大な楽曲は本作や次作「チェンジマン」の世界観を壮大なスペースオペラへ連れていっていくれました。
主題歌のメロディラインもさることながら、歌詞の「宇宙の青いエメラルド」という言葉が似合うように、本当に何度聞いても飽きない素敵な音楽が本作の世界を彩っています。
また壮大なだけではなく、勇ましく前向きでありながらどこかちょっぴり切ないセンチメンタルさもあり、それがバイオマンとして戦う5人の心情や戦いの過酷さを表しているのでしょう。
特にバイオマンに変身する時のBGMは勇ましく、この曲が流れただけで自然に心が動かされてしまうのはひとえにこの矢立氏の壮大な楽曲の数々のおかげです。


そしてまた、そんな音楽に似合うメンバーが選ばれていたと思います。レッドワンの郷史朗をはじめイエローの小泉ミカ、ピンクの桂木ひかると全員どこかしら美しくかっこいい色気ある役者たちです。
特に小泉ミカは本当に後述する件がなければ本当にバイオマンを傑作に導いてくれたでしょうし、彼女がいるから郷史朗とのバランスも非常に良かったのに、それが続きませんでした。
これはスーパー戦隊史上最大の遺恨であり、作品だけではなく次作「チェンジマン」以降の歴史もまた違ったものになっていたのかと思うと本当に悔やまれてなりません。
前半、特に序盤はメンバー同士の関係性や宿命を背負って戦う5人の姿が凛々しくかっこよく見えたので、前半はその意味でも大成功だったと思います。


(2)芸術品というべきバイオロボのデザイン


2つ目に、バイオロボのデザインもまた美しく、芸術品とでもいうべきデザインであり、こんなにスッキリとまとまったフォルムの戦隊ロボはバトルフィーバーロボ以来です。
赤、白、黒の3つを基調としていながら、一種の擬似人格のものを持った存在であるかのようにセミオートで動くところなどは後々に出てくる大獣神以降のファンタジー戦隊にも影響を与えています。
アクションも合体・変形のシークエンスもまたかっこよく、OPで見た誰もを魅了してしまうほどの魅力がそこに感じられるのではないでしょうか。
本編では描かれていませんが陸海空はもちろんのこと、宇宙でも活動できるように設計されているそうで、それも納得の活躍を見せてくれました。


そんなバイオロボですが、序盤ではいきなり5人の戦士を拉致する怖いところを見せたり、終盤でもピーボをエネルギーを出すために利用したりと割と目的のためには手段を選びません。
武器や技の種類も豊富で、こんなにもたくさんの技を披露した一号ロボもなかなかおらず、最後の最後まで美味しく使い切ってくれたのは大きいのではないでしょうか。
そしてまた、そんなバイオロボと遂になるバルジオンと呼ばれるアンチバイオロボが出てきて、バイオロボを敗北寸前まで追いやるなど見所が最後まであったのです。
この時期の戦隊はどうしても巨大戦というとトドメに入るので、お約束として安心できる反面ひねりがなく予定調和すぎて面白みがないというのがありました。
それを崩して新たな方向性を模索していこうという変化をつけたのがこのバイオロボであり、八面六臂の活躍を見せた本作のある意味での主人公と言えます。


(3)初代イエローフォーの死の真相


さて、そんな風に突き抜けた美点も持つ本作ですが、反面悪いところもあって、その1つが初代イエローフォーの死という形で責任を取らされることになったことです。
これは後年バイオピンク役の牧野美千子氏が語っていたことなのですが、当時JACに所属していた小泉ミカ役の矢島由紀氏は現在千葉で「おなべ(おかまの逆)」として働いているのだとか。
まあ男勝りな人ではありましたが、まさかそういう趣味をお持ちの方だったとは…それはそれとして、どっちにしても中途半端に個人的事情で降板したことに変わりありません。
そのため、途中からは小泉ミカ役に田中真弓氏の声を代わりで当てるという、「仮面ライダー」の藤岡弘氏のバイク事故以来の惨劇が起こってしまったのです。


これは制作側にとって痛手だったのではないでしょうか?というのも、小泉ミカは体格的にも性格的にも唯一郷史朗とタメを張れるナンバー2のような存在でした。
立花レイのさらに上を行く強いヒロインを目指したのでしょうが、実際にあの郷史朗のカリスマ性と真っ向勝負でぶつかって当たり負けしないのはミカだけです。
その彼女が降板となると郷史朗のワンマンチームっぽくなってしまい面白みがないですし、代わりで入ってきた矢吹ジュンはどうもいまいち頼りありません。
かといって、いわゆる国際組織の所属ではないために「転勤」といった理由は使えず、バイオ粒子を持つものとして死なせなければいけなかったのです。


これがなければ、物語後半での失敗はなくもっと綺麗にまとめることができたであろうに、そうした当初の構想は全部なくなってしまいました。
もし矢島由紀氏が最後まで続けてくれていたら…本作ほど戦士の途中交代が惜しまれる作品はないでしょう。


(4)今ひとつ結びつかなかった伏線や仕掛け


(3)で述べたイエローフォーの死亡がきっかけとなり、今ひとつ序盤から後半にかけて仕込んだ伏線や仕掛けが終盤でうまく機能しなかったのも惜しまれます。
小泉ミカしかり、冒頭の方で述べたドクターマンの元地球人設定、そして終盤で登場する郷親子とのドラマやシルバ、バルジオンなども含めてうまく盛り上がりませんでした。
特に郷親子と影山親子(ドクターマンとその息子)の設定はもっとうまくやればすごいドラマができたであろうに、全く面白くなってくれなかったのです。
また、元地球人という設定だからか、倒してしまうと後味が悪いという理由から「殺してはならない」という設定にされてしまい、ラストはカタルシスがありません。


前作でうまくいった要素と上原正三戦隊が大切にしたことを掛け合わせて、より壮大な展開にしようとしたのでしょうが、いまいち歯車がうまく噛み合わないままでした。
特にバイオハンターシルバの持つ「反バイオ粒子」などは序盤から伏線が張られていた要素だけに、もっと丁寧に扱って欲しかったのですが、かなり雑に処理されています。
もっとも、こうした不満点があるからこそ、次作「チェンジマン」があれだけ大きく跳ねることができたと言えるのですが、実に惜しい要素が後半〜終盤の展開です。


(5)「バイオマン」の好きな回TOP5


それでは最後にバイオマンの中から好きな回TOP5を選出いたします。


・第5位…23話「ギョ!人形の襲撃」
・第4位…15話「女戦士炎のちかい」
第3位…35話「6番目の男」
第2位…6話「起て!バイオロボ
第1位…2話「集合!宿命の戦士」


まず5位は家出少女と郷の話で、個人回としてはまあまあの面白さ。家出少女の設定がご都合主義的ではあるものの、あの人形の襲撃は今見ても結構なホラーです。
4位は新人イエローのジュンとひかるの女戦士タッグ回であり、喧嘩をしながらもしっかりと仲を深めていくプロセスが描かれたのはいいところではないでしょうか。
3位は後の追加戦士登場のヒントになると思しきエピソードで、ひたすら中の人のアクションが素晴らしいのですが、バイオマンとの相性が悪かったのは残念。
2位はミカのサブリーダーとしてのいいところと悪いところが双方描かれ、それを励ますリーダーの郷という素晴らしい2TOPの関係性が描かれた名作回。
そして堂々の1位は宿命を拒否するミカとそれを説得する郷のコンビが描かれた2話であり、序盤の立ち上がりとして最高のエピソードでした。
改めて1位と2位に小泉ミカがくるあたり、いかにミカがバイオマンという作品のキーパーソンであったかがわかろうというものです。


(6)まとめ


改めて見直すと「バイオマン」は数々の美点を持ちながらも、それらを100%活かし切ることのできなかった惜しい作品という評価になってしまうでしょうか。
やはりターニングポイントは小泉ミカ役の矢島由紀氏の降板であり、それがなければもっといい展開があったかもしれないのにと思うと残念です。
残念ながら「デンジマン」を超える壮大な傑作とはなりませんでしたが、それでも後の戦隊でしっかり消化されていく要素は十分種まきしてありました。
そしてそれらの反省があればこそ、次作「チェンジマン」の輝きもあるものだと思うと、決して今作は全てが失敗だったわけではなかったと言えます。
総合評価はC(佳作)となるでしょう。

 

 

超電子バイオマン

ストーリー

E

キャラクター

E

アクション

B

カニック

A

演出

B

音楽

S

総合評価

C

 

評価基準=S(傑作)A(名作)B(良作)C(佳作)D(凡作)E(不作)F(駄作)

 

 

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