明日の伝説

好きな特撮・アニメ・漫画などに関する思いを書き綴る場所。更新停止

スーパー戦隊シリーズ第5作目『太陽戦隊サンバルカン』(1981)

f:id:gingablack:20211116190506j:plain

出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/4065096065

スーパー戦隊シリーズ第5作目『太陽戦隊サンバルカン』は上原正三氏がメインライターを務めた最後の戦隊であり、ある意味究極のナショナリズムを体現した軍人戦隊の中の軍人戦隊です。
ブラックマグマとの戦いに備えてあらかじめ訓練された陸海空のスペシャリスト、敵が世界征服を宣言してから戦いに入るまで微塵の迷いもなく戦いに投入することができます。
しかも「ゴレンジャー」と違いセキュリティ対策もバッチリであり、シリーズ5作目にしてある意味究極のプロフェッショナル戦隊を形にしてしまったと言えるでしょう。

本作の特徴は「ゴーカイジャー」「ゼンカイジャー」など除くとシリーズで唯一の続編であり、最初は前作「デンジマン」とのコラボレーション(共闘)という路線も構想されていたのだとか…。
その証拠に前作のヘドリアン女王を演じた故・曽我町子氏が続投になり、更にヒーロー側にも故・岸田森氏を起用するなど敵側も味方側も大ベテランを配しています。
そして何よりもシリーズ初の合体ロボ…この後スーパー戦隊シリーズの1号ロボは「フラッシュマン」のフラッシュキングまで3つのメカが合体する形ですが、その原型が本作です。
名乗りやアクションに動物モチーフ(イーグル、シャーク、パンサー)を取り込んでいるところも後々のファンタジー戦隊などに大きな影響を与えています。


さて、そんな本作の魅力を語る前に、ファンならご存知であろう本作のパロディ作品についても触れておきましょう。
そのパロディ作品とは言うまでもなく「愛國戰隊大日本」という、現GAINAXの前身であるDAICON FILMが作り上げたものであり、ナレーションやスーツアクターなどをかの庵野秀明氏が務めています。
当時の冷戦を下敷きに日露戦争を再現しています…主題歌はまんまサンバルカンのパクリですし、特撮やアクションシーンもまんま本作と次作「ゴーグルV」をパロディしたものです。
いわゆる「シベリア送り」「マルクス」「資本論」「共産党宣言」「露助」などの差別用語などがバンバン飛び交うので、それが国のお偉方の反感を買い1話分しか映像化されていません。
万が一全話製作されていたらどうなっていたのでしょうか?いわゆる「アキバレンジャー」のようなディープなファンがつく作品となったのでしょうか?


そんな風にパロディまでが作られるほどの人気を博した本作ですが、個人的な評価はまずまずといったところで、今の所「ジャッカー」以上「バトルフィーバー」未満という感じになります。
その理由について、良かったところと納得のいかなかったところ、悪かったところなどを合わせて紹介していきますので、ぜひご覧ください。

 

 


(1)嵐山長官VSヘドリアン女王


本作の構造ですが、最初の方でも書いた通りこれはもう実質「嵐山長官VSヘドリアン女王」と言っても構わないほど、長官と前作のラスボスの2人の存在感が濃すぎて、ほかのキャラクターが霞んでしまっています。
強いて言えば、本作の紅一点にして実質の「戦うヒロイン」担当の嵐山美佐と、後半に登場する2代目バルイーグルはまあまあの存在感はありましたが、あとはヒーロー側もヴィラン側もほぼほぼ空気です。
とは言っても「ジャッカー」のあの没個性化に比べればまだ可愛い方ではあるのですが、とにかく作品全体の存在感を強烈な2人の俳優・女優で持っていたことが良くも悪くも本作の特徴でしょう。


特に嵐山長官の存在感はすごく、普段はスナックサファリの優しいマスターで、子供たちとも絡んだり変装してひょうきんな踊りを見せたりしているのですが、太陽戦隊の指揮官としてはめちゃくちゃすごいです
鉄山将軍や伊吹長官、三浦参謀長ばりの完璧超人タイプであり、セキュリティ対策から何から完璧にやっていて、しかもラストはバルカンスティックでトドメを刺すという美味しいとこを持って行きます。
え、えーっと…戦隊シリーズの主人公ってレッドやメンバーじゃなかったっけ?と言いたくなるくらい、とにかく八面六臂の大活躍を見せており、歴代戦隊で最高の司令官の筆頭に上がるでしょう。


ヘドリアン女王もまたデザインこそ大きく変わってしまったものの存在感は前作同様に健在であり、終盤の方でもしっかりサンバルカンを追い詰める八面六臂の大活躍を見せます。
そのため、どうしても終盤では最終的に大ボスであるはずのブラック将軍や全能()を差し置いてでもこの2人が実質の主人公のようになってしまっているのです。
この「戦隊指揮官VS敵幹部」という構図は「ジュウレンジャー」のバーザとバンドーラであったり「メガレンジャー」の久保田博士とドクター・ヒネラーがそうなのですが、その原型とも言えます。
そのため、この2人の演技合戦を目的に見るのでしたら、本作は紛うことなき傑作なのですが、反面やはり他のメンバーたちが割を食ってしまっている感は否めません。


(2)没個性な戦隊ヒーロー


やっぱりどうしても本作を語る上で避けられないのは没個性な3人のヒーローであり、メイン回がそれなりに割り振られているにもかかわらず、変身前のキャラクターが薄いのです。
これは嵐山長官に存在感を食われてしまっていることが最大の原因なのですが、それ以前に日常シーンでの絡みであったり個性を発揮したりする場面が極端に少ないことも挙げられます。
初代バルイーグルの大鷲に至ってはメイン回すらなく、まだ終盤で見せ場のあった「ジャッカー」の桜井に比べても、その後の戦隊レッドの扱いを見てもかなり不遇の扱いと言えるでしょう。
変身後はそれなりに名乗りや動き方、陸海空という設定を生かしての戦い方でわかりやすかったのですが、変身前のキャラクターが面白くないと変身後のキャラも映えません。


もっともこの点に関しては2代目バルイーグルの飛羽が来たことである程度解消され、レッドといえば剣技というイメージがついたのはこの2代目バルイーグルからです。
演じる役者さんはのちに「カクレンジャー」のヒロイン・鶴姫の父親役として再登場するのですが、声も通ってるし演技・アクションも文句なしにカッコよかったので、レッドがかっこいいだけでもだいぶ印象が違います。
やはりレッドと他メンバーとはある程度の格差があった方がよく、前半の段階だと正直3人の格差や実力差などのヒエラルキーが見えなかったのですが、後半でわかりやすくレッドと他2人という違いが出ましたね。
「ジャッカー」が失敗してしまったのはまさにそこであり、しかも後半では司令官も兼任する番場壮吉に見せ場をことごとく持って行かれてしまい、集団ヒーローとしての体裁すらなくなってしまいます。
そうした最悪の罠に陥らなかっただけでもまだ本作はマシなのですが、上記した嵐山長官とヘドリアン女王に食われてしまっているというのは否めません。


(3)単発だとそこそこ面白い話もある


「ジャッカー」に比べると救いなのは単発のサブ回だとそこそこ面白い回もあって、のちに紹介する好きなエピソードTOP5などはまさにこの長所に入ります。
とはいえ、その多くが嵐山親子のメイン回というのが玉に瑕なのですけどね…バルパンサーでの親子メイン回はそこそこ面白かったのですが、強いて言えばそれくらいか。
ただ、この時代の戦隊自体がいわゆるいまの戦隊と違って大河ドラマのごとき縦糸や軸となるものがないので、単発で勝負できる面白さがないと辛いところです。
例えば「ジェットマン」「ギンガマン」「タイムレンジャー 」「シンケンジャー」などのように、年間を通した大筋があれば、多少脇道に逸れても大筋を評価できます。
逆に言えば、大筋さえきちんとしていれば、多少サブ回がつまらなくても年間の総合評価にはそこまで大きく影響しないのが救いです。


それに対して昔の戦隊や年間を通しての大筋、大河ドラマのような流れを持たない戦隊の場合単発での面白さで勝負ができないととても厳しいものになってしまいます
例えるなら年間を通した大河ドラマ方式で勝負する戦隊は1年かけてじっくり走り込む長距離マラソン、そうではなく単発の面白さで勝負する戦隊は短距離走を1年間繰り返す感じです。
本作はその点で言うと後者なのですが、上記したようにメンバーの変身前の個性が弱くメイン回も少ないので、どうしても年間を通して面白い回がやや少なめなのが気になります。


(4)続編ものとして気になる矛盾


さて、冒頭の方でも書きましたが、本作は前作「デンジマン」の正式な続編として描いてしまっているので、いま見直すと後付けならではの矛盾点も感じます。
その最たるものとしては「デンジマンがベーダー一族と戦っている間、国連側は一体何をしていたのか?」ということであり、これは由々しき問題でしょう。
デンジマンの5人が必死に戦っている間、嵐山長官をはじめとする地球側の国際軍事組織はただベーダーとデンジマンの戦いを指をくわえて見ているだけだったのか?と思ってしまいます。
しかも前作の映像を途中の話で挟んだりもしているので、なおさらのことそう思えてしまうのです。


そこで個人的にある程度好意的に解釈したのですが、おそらく嵐山長官たちはデンジマンとベーダーの戦いを何かしらの形で分析しながら開発と訓練を進めていたのでしょう。
いわゆる「ドラゴンボール」のドクターゲロが孫悟空やピッコロ、ベジータあたりのデータを元にスパイロボを飛ばし、戦闘データを研究して人造人間を作ったのと同じ理屈です。
ベーダー一族かそれに匹敵するスペシャリストを育て上げるため、徹底的にデンジマンとベーダーの戦いを分析し、ブラックマグマの襲来を予感してマニュアル化していたものと思われます。
そう考えると、敵が不意打ちをしてきたにもかかわらず、セキュリティ対策が完璧だった理由も納得行くのではないでしょうか。
まあ強いて言えば曽我町子氏を続投したかったからというのが大きかったのでしょうが、もうちょっとこの辺りの設定は詰めておいて欲しかったところです。


(5)「サンバルカン」の好きな回TOP3


それでは最後にサンバルカンの中から好きな回TOP5、と言いたいところですが、そんなに思い入れのあるエピソードがないのでTOP3を選出いたします。


第3位…19話「危険な100点少年」
第2位…11話「哀しみのメカ少女」
第1位…14話「地球が降伏する日」


19話はいわゆる夏休みの子供向け教育系のエピソードとして…洗脳して子供達を100点取れるようにして、それが果たしていいことなのかを問う、サブエピソードの秀逸回。
2位は11話の切ない系エピソードで、いわゆる「敵側だったものが味方につこうとすると倒される」のお得意パターンで、黒い上原正三節が出た1本でした。
そして1位は嵐山長官の最強伝説にして「太陽戦隊とは何か?」を象徴する傑作回。非情な決断も辞さない嵐山長官のかっこよさがとにかく全てを物語っています。
こうしてみると、本作はやっぱり戦隊メンバーよりも脇役や嵐山長官の方が面白い回が多いのが何ともという感じです。


(6)まとめ


前作「デンジマン」の続編として作られた本作は正直上原正三メインライターの戦隊として有終の美を飾ったとは言えません
何より戦隊メンバーの変身前の個性が薄いままという「ジャッカー」と同じミスを繰り返しているのはいただけないところです。
ただ、嵐山長官とヘドリアン女王の存在感によって何とかそこそこのバランスを保ちつつ、サブエピソードなどで面白い回もそれなりにありました。
本作で培われた要素は全部が全部ではないものの、後々のシリーズに継承されている部分もあり、それなりに意味のある作品だったとは思います。
総合評価はD(凡作)となるでしょうか。

 

 

太陽戦隊サンバルカン

ストーリー

D

キャラクター

E

アクション

C

カニック

B

演出

D

音楽

B

総合評価

D

 

評価基準=S(傑作)A(名作)B(良作)C(佳作)D(凡作)E(不作)F(駄作)

 

 

にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村