明日の伝説

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「スーパー戦隊シリーズとは何か?〜その解釈、本当に正しいですか?〜」追記

gingablack.hatenablog.com

 

昨日このような記事を書きましたが、本格的なスーパー戦隊シリーズ作品を論じる前に幾つか追記しておくことがあります。


スーパー戦隊シリーズは今でこそ「チームヒーロー」の特色が強いのですが、しかしこの特徴は何もスーパー戦隊に特有のものではないでしょう。
それではなぜこのようになったのかというと、一番の違いはやはり円谷プロウルトラシリーズや同じ東映特撮の仮面ライダーシリーズとの差別化にあります。
ウルトラシリーズ仮面ライダーシリーズに関してはまた機会があればじっくり向き合って考察していきたいのですが、1つ注目しておきたいポイントがあるのです。


それは「ウルトラマン仮面ライダーは単独ヒーロー、スーパー戦隊シリーズがチームヒーロー」という区分ですが、実はこれこそが大きな間違いだと言わざるを得ません。
仮面ライダーV3・風見志郎とアオレンジャー・新命明の双方を演じた宮内洋氏が仮面ライダー・本郷猛を演じられた藤岡弘、氏との対談で以下のことを仰っていました。

 

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「今まではヒーローというのは1人だった。それがゴレンジャーで5人一辺に…これはヒーロー分散するんではないかという」
「最後は怪人1人に対して5人が立ち向かうわけですけど、そうすると当然「弱いものいじめ」になってしまう」
「我々はみんな弱いんだけども、チームワークで、連携すればどんな敵にでも立ち向かえる

 

このようなことを仰っていたのですが、もちろん双方を演じられた役者自身の実感から出たものですし、表面的にはこうした言葉は間違いではないのでしょう。
ただし、宮内氏の発言が全て正しいのかというと決してそうではなく、当てはまる部分もあれば当てはまらない部分もあるので注意しなければなりません。


まず最初の発言ですが、ウルトラマンにしても仮面ライダーにしても本当の意味で1人のヒーローだった訳ではなく、理解者や支えてくれる人はいました。
例えば「ウルトラマン」の場合、基本的に主役として話を動かしているの科学特捜隊のメンバーと毎週出てくる怪獣・宇宙人です。
ウルトラマンはあくまでも科学特捜隊の力ではどうにもならない時の最終手段として出てくるデウス・エクス・マキナのようなジョーカー的存在でした。
しかし、そんなウルトラマンですらも後半〜終盤にかけて科特隊が成長していくと、ウルトラマンの力を必要とせずとも地球の平和を守れるようになります。
そして最終回「さらばウルトラマン」ではとうとう科特隊=人類がウルトラマンからの自立を果たし、ウルトラマンが撃退できなかったゼットンを倒すのです。
そう、実は「ウルトラマン」という作品は実はウルトラシリーズのフォーマットを完成させた名作でありながら、同時に「ウルトラマンを必要としなくなる世界」を描いたアンチヒーローものでもあります。


また、ウルトラシリーズは第二期の「帰ってきたウルトラマン」でウルトラセブン初代ウルトラマンとの共演を果たし、「エース」「タロウ」では遂にウルトラマンが勢ぞろいするのです。
「エース」のヒッポリト星人回では歴代ウルトラマンでみんなでGOをやってますし、「タロウ」なんてウルトラマンだけではなくウルトラの父ウルトラの母まで出てきています。
あれ?ウルトラマンって1人で戦うヒーローではなかったんでしたっけ?そう、1人で戦っている(と言われている)ウルトラマンもよくよく見るといろんな人たちの力を借りているのです。


同じことは仮面ライダーシリーズにも言えて、仮面ライダーだってそもそも初代からし藤岡弘、氏が大事故で入院し二号の佐々木剛氏に代わってらはすぐにチームヒーローの空気が強くなりました。
仮面ライダーほどの戦闘力はないもののFBIから来た滝和也、バイクの開発から特訓までしてみせるおやっさん、そして賑やかしとしてライダーと楽しそうに戯れるライダーガールズ三人衆…全然孤独感がありませんね。
しかも藤岡弘、氏が復帰した最初に行われたのがダブルライダーの共演で怪人1人を2人がかりでフルボッコにして倒す…これは宮内洋氏が指摘する「ヒーロー分散」「弱いものいじめ」ではないでしょうか?
その後も結局「アマゾン」「BLACK」を除く昭和ライダーでは現役ライダーがピンチになるとすぐに外国から先輩ライダーが駆けつけてくれるというご都合主義も甚だしい展開が目立ちます。
「ストロンガー」終盤の7人ライダーによるデルザー軍団フルボッコからの大首領との最終決戦など、スーパー戦隊シリーズがとても可愛く見えるヒーロー分散にして弱いものいじめの構図です。
これのどこが「孤独なヒーロー」なのでしょうか?


このように、スーパー戦隊シリーズが「5人1組のスクラムを組んだチームヒーロー」、ウルトラマン仮面ライダーが「孤独に戦うシングルヒーロー」という見立ては実態とかけ離れた極めて危険な見方です。
だからスーパー戦隊シリーズを批判する時に惹句として使われる「ひとりひとりは小さいけれど、ひとつになればご覧、無敵だ」(バトルフィーバーOPより)は仮面ライダーにもウルトラマンにも適用されます。
それに「5人1組のチームヒーロー」と言いますが、シリーズの中には4人組の戦隊や3人組の戦隊もありますし、「ジュウレンジャー」以降では6人以上で戦うことも珍しくなくなりました。
このようなありがちな誤解をまずは修正しておかないと、スーパー戦隊シリーズの本質が安易に「チームワーク」「地球を守る」にあるという物差しだけで全てを判断してしまいがちなのです。

 

まずはこの辺りの偏見・誤解をしっかり無くし、フラットにした状態で改めてスーパー戦隊シリーズの魅力について考えていきましょう。